交際費の計上は無制限!?
地方税にも調査が入る!?

 副業の確定申告に関しては、家事関連費以外の費用についても次の点を押さえておきたい。
 
 まず、「接待交際費」である。副業で顧客との打ち合わせや接待で使った飲食代やゴルフ代金などは接待交際費として経費計上でき、計上できる費用に上限はない。ゆえに、当局は業務以外の私的な飲食などが費用として計上されていないかに着目する。
 
 なお、副業を法人化している場合には、接待交際費として経費計上できる金額に上限があることを知っておきたい(*3)。例えば、期末の資本金が1億円以下の中小法人なら、接待交際費として計上できるのは次のいずれか範囲となっている(ここでは資本金1億以上の大企業の場合は省略)。

 (1)支出した接待交際費のうち接待飲食費の50%相当額
 (2)支出した接待交際費の金額のうち年間800万円までの金額
 
(1)か(2)のどちらを選ぶかは企業の判断による。接待飲食費だけで1600万円を超える場合は(1)を選択した方が有利で、それ以下なら(2)の方が節税になる。例えば、年間の接待交際費が800万円以下であれば、その全額を必要経費にすることができる。

 さらに、取引先や仕入先を接待する目的で行った会食であっても、1人当たりの費用が5000円以下の場合は接待交際費には当たらないので、接待交際費ではなく「会議費」などで経費計上していれば、全額損金処理できる(*4)。
 
 次に、所得税の確定申告をすると、その情報が居住する地方自治体に共有されることも認識しておこう。自治体は所得税の確定申告情報を基に、住民税を計算して納税者に連絡する。冒頭で「年間20万円を超える副業による所得があれば年末調整をしていても所得税の申告が必要」と述べたが、副業所得が20万円以下でも地方税は課税されるので、確定申告の情報によって所得に応じた税額が自治体から通知される。
 
 ならば、仮に副業の所得に関して(お尋ねなど)税務署の調査が入った場合、地方税の調査も実施されるのだろうか。
 
 税務署による所得税の税務調査の結果、修正申告、期限後申告、更正または決定(税額を正す行政手続き)がなされた場合、その納税者の課税標準(税額の算定基準)や税額などに関するデータは自治体に提供される。それに基づいて、自治体の徴税担当者から納税者に問い合わせ連絡が来ることもある。
 
 自治体が独自に調査を行い、その調査結果に基づいて更正または決定を行うこともできるが、一般的には課税標準が国税(例:所得税)に準拠する税(例:地方税)については、独自に税務調査を行うことはない。

 以上、副業での確定申告で特に留意しておきたい経費、とりわけ家事関連費の考え方や、それに関する国税当局の着眼点を紹介した。当然だが「やりすぎ」は目を付けられる。家事関連費に限らず、経費計上には合理的な根拠が必要なのだ。

 一度、税務調査に入られると、数年後にも調査に入られる可能性が高い。確定申告の手続きは、国税庁のサイトからPCやスマートフォンで簡単に行えるようになったが、経費の扱いなど自分で判断がつきにくい場合は、国税庁の「やさしい必要経費の知識」を参照する、あるいは専門家に相談するなどして、十分注意しながら適正な申告を心がけよう。

*3 税法上、法人の接待交際費は原則として全額が損金不算入。会計上は経費になっても税金の計算では接待交際費を経費にすることはできないのが原則。接待交際費として計上できるのは特例によるもの。

*4 2024年4月から1万円以下に引き上げ。交際費等から除外される経費の詳細は「交際費等の範囲と損金不算入額の計算」(国税庁)を参照。