ちなみに、「衒学的」の衒という字は「衒(てら)う」とも読みます。意味は「自らの能力や実績などを言動にひけらかすこと」で、この漢字自体に「ひけらかす」のニュアンスがあることがわかるかと思います。そのため、たとえば「奇を衒う」という言葉は「奇抜なことをひけらかして注目を集める」という意味になるわけです。いくつも個別に言葉を覚えずとも、一字を深く学ぶことで複数の言葉を覚えられる。これが本当の語彙力の勉強です。

 みなさんの学校には英単語のテストがありますか? あれ、嫌ですよね。覚えるのは面倒だし、何回もあったりするからつらくって。そしてテストで合格点を取れないと、補習だって言ってもう一回テストを受けさせられたりして。

 単語テストの多くは「この単語の意味はなんでしょう」ということしか聞いてきません。「sign=符号」「order=秩序」のように、英単語とその意味を暗記する勉強をしていれば点数が取れます。

 でも、そうやって暗記した言葉の意味をみなさんは本当に理解できているでしょうか。

「符号」ってなんですかね、「秩序」ってどういう意味ですか?

 単語テストでは意味がわからなくても点数になってしまいますが、それではいつまで経っても本当の語彙力は身につきません。その言葉の意味を、自分で説明できるくらいに、しっかりと理解すること。これが大事なのです。

 語彙力を付ける≠ぼんやりした理解や意味の丸暗記

 語彙力を付ける=意味を自分で説明できるくらいにしっかりと理解すること

 ということですね。これをしっかり覚えてください。

知識の丸暗記は
意味がない

 もう少し、語彙力を付けるとはどういうことか説明していこうと思います。

 たとえば、あなたが人に「インサイダー取引ってなに?」と聞いた時に、こんなふうに答えが返って来たとします。

「悪いことだよ」

 これに対して「なるほど、わかりやすい説明だ」と納得できるでしょうか。できるわけがないですね。というかこの会話、ツッコミどころ満載です。ある意味確かにわかりやすいですが、「インサイダー取引」のことが何も理解できません。

「悪いことだよ」という返しに対して、多くの人は違和感を持つと思います。しかし、これを笑ってもいられません。これと同じことを無意識のうちに、けっこう多くの場面で、多くの人がしてしまっています。せっかく言葉自体は知っているのにもったいないことです。