写真:要介護状態の親のイメージ写真写真はイメージです Photo:PIXTA

要介護状態の親を扶養している人は「ダブル控除」を受けられる可能性がある。実は専門家でも見落としがちなこの「非課税の枠」を使い残すと、大損になってしまう。今、心当たりがある人はもちろん、そうでない人も将来に備える意味で、ぜひ知っておいてほしい。(ファイナンシャルプランナー〈CFP〉、生活設計塾クルー取締役 深田晶恵)

親が「要介護状態」なら
確定申告をしよう!

 親や配偶者が「要介護状態」という人は決して少なくない。私自身、50代になってから、周囲の50~60代の友人・知人から「親が介護状態で大変」などといった話を聞く機会が格段に増えた。

 家族が公的介護保険のサービスを受けている人にぜひ知ってほしいことがある。それは、「要介護状態の人は『障害者控除』を使えるかもしれない」ということ。税金における「控除」は「非課税の枠」を意味するので、使い残しは絶対に避けたい。該当する人は障害者控除を使って、確定申告で税金の還付を受けよう。

 障害者とは身体や精神に障害がある人を指し、要件を満たすと「障害者控除」を本人、または本人を扶養している家族が使うことができる。詳細は後述するが、「家族でも使える」のが重要なポイントだ。

 親が65歳以上で要介護状態なら、障害者控除の対象となる可能性があることを大多数の人がご存じない。ファイナンシャルプランナー(FP)である私自身も、数年前に同居の義両親が要介護状態になった際、受けられる支援策を調べている中で初めて知った。

 例えば、東京都大田区のホームページには次のような記述がある。

「税法上の障害者控除の対象者とされる高齢者は、障害者手帳(身体・精神・知的)の交付を受けている人のほか、『寝たきり』あるいは前述の障害者手帳に準ずる者として区市町村が認定した方とされております」

 障害者に準ずるほど日常生活に介護が必要であれば、障害者控除の対象になるということだ。ただし、公的介護保険の要介護認定を受けているだけで要件を満たすわけではなく、居住の自治体から「障害者控除対象者認定」を受ける必要がある。

 障害者控除対象者認定を受けることができると、どのような控除を受けることができるのだろうか。

「障害者控除」は27万円、より重度の障害の場合は「特別障害者控除」で40万円、さらに同居の扶養親族が特別障害者なら「同居特別障害者控除」に該当し控除額は75万円と高額だ(控除額はいずれも所得税の額)。

 さらに、認定された本人を扶養している人は、上記の控除に加え「扶養控除」も受けることができるのだ。

 例えば、70歳以上の親が障害者控除と認定され、同居で扶養していると、同居老親扶養控除58万円に障害者控除27万円が足され、合わせて85万円の控除を受けることができる。年収800万円の人を例にとると、節税額は所得税・住民税を合わせて約25万円となる。まさに知らないと損だ。