連載 コンサル大解剖Photo:SOPA Images/gettyimages

戦略系コンサルティングファームで圧倒的なブランド力を誇るマッキンゼー・アンド・カンパニーで、“異変”が生じている。直近で、2回連続で受けると実質的に退職勧奨に追い込まれる「イエローカード」相当の人事評価を受ける社員が続出。さらに、プロジェクトにアサインされない状態の人員が以前より目立つというのだ。長期連載『コンサル大解剖』の本稿では、ダイヤモンド編集部の取材で判明したマッキンゼーの人事評価体系を詳説するとともに、異変の中身についても明らかにする。(ダイヤモンド編集部 竹田幸平)

あのマッキンゼーに異変?
人事評価の仕組みも判明

 グローバルなコンサルティング業界で、圧倒的な実力やブランド力を誇るのが、大手戦略系ファームのマッキンゼー・アンド・カンパニーだ。「MBB」(マッキンゼー、ベイン・アンド・カンパニー、ボストン・コンサルティング・グループ)と呼ばれる、三大戦略ファームの中でも、その存在感は常に抜きんでている。

 総合系ファームのビッグ4(デロイト、PwC、EY、KPMG)やアクセンチュアと比べて、収益や人員(本連載『アクセンチュア&ビッグ4、グローバル業績を徹底解剖!「コンサル頂上決戦」の勝者は誰だ?』参照)などの規模こそ小ぶりだが、東京大学や京都大学といった超一流大学の新卒就職人気は常に最上位クラスだ。

 国内コンサル業界では数年来、空前のバブルを背景に、とりわけ総合系ファームで各社が人員を急増させてきた。その結果、人材やサービスの「質の低下」を嘆く声も漏れ伝わっていたが、MBBを筆頭とする戦略系ファームは今なお、基本的に少数精鋭路線を貫いており、人材の優秀さには定評がある。マッキンゼーを「卒業」後、経営者として活躍する例も数多い。

 一方で、実は昨今の状況を鑑みれば、決して順風満帆とは言い切れない。

 世界経済の先行き不透明感を背景とした、コンサル業界を取り巻く風向きの変化(本連載『アクセンチュアが基本給据え置き、デロイトは予算未達ドミノ…コンサルバブルの「勝ち組」に異変』参照)の影響は、マッキンゼーも例外ではないのだ。

 昨年2月には、同社のバックオフィス人員の削減を実施する方針が報じられた。だが、異変は決してそれにとどまらない。

 マッキンゼーでは半期ごとにSAR(セミ・アニュアル・レビュー)と呼ぶ人事評価が行われるが、ある同社関係者は「直近ではconcern(〈懸念〉の意)の評価を受けるコンサルタントが続出した」と話す。これは、サッカーで言う「イエローカード」に相当し、2回連続となれば、実質的に退職勧奨へと追い込まれる可能性があるとされるものだ。

 ダイヤモンド編集部の取材に対し、同社の広報担当者は、電子メールで「懸念の評価を受ける従業員の割合はこれまでの水準と一致している」と回答。「異例の年ではない。今の業績評価プロセスも過去数年のものと比べて一貫している」と強調する。だが、異変の兆候はほかにも見受けられる。

 マッキンゼーに今、何が起きているのか。次ページでは独自に入手した情報を基に、同社の国内外の異変の数々を詳報する。併せて、5段階の評価に基づく、SARの仕組みもひもといていく。