佐藤 対米従属論に関しては非常に複雑で、言ってみればアメリカに全く従属していない国というのは世界でも少ない。白井さんはその上で、日本独自のねじれた対米従属のあり方を問題にされていると思うのだけれども。トランプ政権の誕生で、また急激に予見が変化しましたね。トランプの介入によって朝鮮半島情勢の問題が解決すれば、地政学の見地から言っても、必然的に米中対立が本格化しますから。

白井 はい。これまで私は、日本の対米従属の異様さは、「アメリカは日本を愛してくれているのだ」という虚構に基づいている点にあると考えてきました。しかしトランプ大統領は「愛しているフリ」のゲームを続ける気がない。いよいよ対米関係を相対化しないわけにはいかない状況になってきました。その動きを背景に、北方領土問題も動き出す気配がありますね。

佐藤 ええ。現政権の間に歯舞群島、色丹島の返還でケリをつける可能性があります。正確には2島+アルファ(国後島と択捉島はロシアの法律に服すものの、日本人はパスポートなし、関税免除してもらうなど特別に優遇する法を作る案)の形で。

自分で考えなければ
生き残れない時代

白井 ただ、ここまで対米従属している政権にそれができるのか、半信半疑でもあります。というのもこれまでの4島一括返還という要求は、歴史的経緯からしても無理筋でした。要するに解決する気がなかったわけですよね。

佐藤 当時の反共体制においてはそうでしょう。アメリカが小笠原と沖縄に施政権を行使している状態で歯舞群島と色丹島を引き渡されたら、日本国民にとってはアメリカよりソ連のほうがいい国だってことになりますからね。

白井 それは「愛しているフリ」としては都合が悪かった、と。

佐藤 しかし現在、トランプ政権は北朝鮮との関係改善に動いている。朝鮮半島情勢の問題が解決すれば、韓国・北朝鮮・中国も地続きとなり、提携が強まる。明らかに北東アジアのバランスが崩れるから、カウンターボーナスとしてロシアが出てきているわけです。トランプの登場で冷戦構造が壊れ始め、一昔前の言葉を使うなら「帝国主義」的な再編が起きていると言える。

白井 そういったシナリオは誰が書いているんですか。