「スマホ依存でバカになる」…実は科学的根拠のないネガティブ洗脳だった!写真はイメージです Photo:PIXTA

これまでスマホの悪影響ばかりが取り上げられていたが、最新研究によると、スマホをポジティブに使いこなす人ほど、集中力が増し、成績も上がることがわかってきた。本稿は、星 友啓『脳を活かすスマホ術――スタンフォード哲学博士が教える知的活用法』(朝日新書)の一部を抜粋・編集したものです。

ググってばかりいると
記憶力が下がるのか?

 これまで、スマホのネガティブな面ばかりが強調されてきました。言ってみれば、「ネガティブ洗脳」です。

 わかりやすい例に、「グーグルエフェクト」があります。必要な情報はいつでもグーグルを使って検索、つまりググれると思っているので、実際記憶しようとしなくなってしまい、覚えが悪くなる、という主張です。

 名前もついているくらいなので、ずいぶん拡散された現象なのですが、実はこれは、根拠となる研究論文の全貌を把握していない言説なのです。

 確かに論文中には、ググったもの自体は覚えなくていいと思ったので記憶力が下がったという記述がありますが、一方で、「そのググったものがどこにあるかという記憶は上がっていた」ということが明示されています。

 つまり、ググったあと、そのページのどのあたりにどんなことが書かれていたのか、といった記憶力は、以前よりもアップしていたのです。

 要するに、一部の記憶は下がっていたわけですが、その分上がっているところもあった。記憶しようとするものの「対象が変わっただけ」なのです。

 それにもかかわらず、記憶が下がった部分だけを「切り抜き」して注目させることで、記憶力全体が下がってしまったかのような「ネガティブ洗脳」が広がってしまったのです。

 似たようなネガティブ洗脳のパターンに、研究の大事な条件がバサッと省かれてしまうようなものがあります。

 例えば、ネガティブな研究結果には、以下のようなものがありました。

・スマホ使用1時間ごとに6%ずつ成績が下がる
・スマホ使用1時間ごとに7%ずつ集中力が下がる

 これらは実は、2歳までの子どもたちに限定して行われた研究に関するものでした。またここで言う「成績」とは数の認知に関するもの。

 つまり、2歳以下に限定すると、スマホの使用時間に応じて、その後の数の認識などの成績や集中力に悪影響が出る、というものだったのです。