一時的だったり、限定的だったりする話を、誇張して一生の記憶力についての不安や心配に結びつける。そんな「極度な一般化」によるネガティブ洗脳には、十分気をつけなければいけません。

集中力やパフォーマンスの低下は
スマホ特有の悪影響にあらず

 これまでのスマホのネガティブキャンペーンで最も注目を集めたのが、「スマホ使用が集中力の低下につながり、パフォーマンスが低下してしまう」というものです。

「スマホが目の前にあると気が散ってしまい、勉強や仕事のパフォーマンスが下がる」
「スマホの電源を切っても、目の前に置くだけで同様の悪影響がある」

 実際、こうした事実に関する研究論文があり、オンライン記事からベストセラー書にいたるまで、さまざまなところでスマホの悪影響を示すものとして使われてきました。

 しかしこの件に関しても、「スマホはダメ」という結論ありきの偏りが見受けられるのです。

 例えば、「スマホが目の前にあると気が散ってしまい、パフォーマンスが落ちてしまう」という結果の他に、他の部屋に置いておけばパフォーマンスが低下しないということがわかっているのです。しかも、そのことは同じ論文の中で指摘されています。

 要するにこれも、悪影響だけを「切り抜き」で使ったネガティブ洗脳だったのです。

 よくよく考えてみましょう。お腹が空いていて、目の前においしそうなお蕎麦があったら、食べたくなって気が散ります。

 また、好きな人が目の前にいたらドキドキしてしまい、やるべき仕事や勉強に集中できず、パフォーマンスが下がってしまう。

 だとすれば、目の前にあることで集中力やパフォーマンスが下がってしまうのはスマホ特有の悪影響ということではなく、私たちが気になるものならどれについても言えることです。つまり、「集中力やパフォーマンスが下がる要因をスマホの悪影響にするのも悪質なネガティブ洗脳」だと言うことができます。スマホが悪いと決めつけて、「とにかくスマホのせい」にする論法にも注意が必要です。