「変動型」住宅ローン変化せず

 3月19日の決定は大きな転換点となったものの、当面は、日銀は緩和的な金融政策を続ける。短期間に見ると、私たちの生活に大きな影響が出る恐れは低い。マイナス金利政策の解除により、国内の銀行は普通預金の金利を引き上げた。その多くが0.001%から0.02%に引き上げるものである。ネット系銀行では0.03%を付利するところもある。

 各銀行の差はあるものの、定期預金金利も上昇した。わが国の預金金利は極端に低い状況が続いたが、今般の決定により状況はやや変化した。今後は、高い定期金利預金を設定する銀行に、これまで以上に資金が向かうことも想定される。

 企業向けの融資金利にも上昇の兆しが出ている。3月15日に0.13%だった「東京銀行間取引金利」(TIBOR)の1カ月物は、22日に0.19%に上昇した。TIBORは企業向け貸出金利の指標として扱われる。

 一方、決定会合の前後で、変動型の住宅ローンの金利の指標となる「短期プライムレート」(1年未満の貸し出しの基準金利)は変化しなかった。現在の短期プライムレートの水準は1.475%である(日銀公表の最頻値)。

 直近で短期プライムレートが引き上がったのは2007年3月のことで、1.625%から1.875%へ上昇した。同年2月、日銀は利上げを実施していた。しかしリーマンショックによる世界経済の悪化により、08年11月に1.675%、09年 1月に1.475%に低下した。その後、16年1月のマイナス金利政策決定時は変化しなかった。

 3月の決定会合で日銀は、無担保コールレート(オーバーナイト物)を0~0.1%程度で推移するよう促すと発表した。翌日物の金利が明確に0.1%を上回る状況が定着しない場合、短期プライムレートに上昇圧力はかかりづらく、変動型住宅ローン金利は大きく動かないだろう。ただ、一部の銀行は変動型住宅ローン金利設定の指標にTIBORを用いる。取引先銀行の方針によって変動型住宅ローン金利が上昇するケースもあるだろう。