「15分で一体に何が話せるんや!」東尋坊の自殺監視人が行政に怒りをぶちまける理由写真はイメージです Photo:PIXTA

テレビのサスペンスドラマのラストシーンとしてもおなじみの、東尋坊(福井県坂井市)。断崖絶壁や特異な岩場が織りなす奇観は、同県を代表する観光資源だ。だが、ここで飛び込み自殺を遂げる者は後を絶たない。そんな彼らに声をかけ、思いとどまらせる最後の砦が、ゲートキーパーだ。東尋坊で活動するNPO法人の茂幸雄理事長に話を聞いた。本稿は波名城 翔『自殺者を減らす! ゲートキーパーとしての生き方』(新評論)の一部を抜粋・編集したものです。

自殺志願者を自殺寸前まで
追い込んだのは誰なのか

茂幸雄 私たちがしているのは、岩場に今から飛び込もうという人たちへの「声かけ」です。「ほっておいてください」って言う人たちを、引っ張ってくるんです。

 今日まで766人(インタビュー時点)。今から死にたい、死なしてくれ、って人たちを強引にここまで引っ張ってきて、話を聞いて、悩み事を聞いて、「お前が自殺したいのはこういう理由やな」と確認するんです。

 彼らは、自分を自殺寸前に追い込んだやつを成敗に行って欲しいんです。会社へ乗り込み、学校のいじめだったら学校に乗り込む。あの人たちはそうして欲しいんです。いわゆる、環境調整をして欲しいんですね。

 これらを抱えて生きていくのはつらいよね。それを取り除かなあかんでしょ。取り除いてあげなあかん。取り除いてくれる社会的な構造になっていますか!?どこ行ったら取り除いてくれるんですか!?この答えを、彼らは聞きたいんです。

「国民の命は国の宝物、財産」とか「あなたの命と生活を守る」と、選挙になると必ず政治家は言います。自殺対策の面でも、その予算が精神医療に結構流れている。結局、「ほざく」やつだけが代議士になっている。医者もそうでしょう。弁護士もそうでしょう。まあ、大体、権力者にとって都合がいいように日本の法律はつくられているということです。

 自殺に追い込まれている人たちは、人権侵害の被害者なんですよ。人権侵害ですよ、全部。法テラス(日本司法支援センター)とかいろいろあるけど、追い込まれた人たちの会社へ乗り込むなりして、安全配慮義務違反の取り締まりをするべきです。

 警告して、「改善命令を出せよ」と言いたいですね。日本の法律をつくっている人たちが「おざなり」のことしかしないし、まちがった税金の使い方をしている。

 たまに、「うちのお父さんが自殺まで……ちょっと思わなかったですね」と言っている人がいるけど、何を言ってるんやって、感じです。薬をいっぱい飲んでいるし、みんな分かっているくせに、分からないふりをしているだけ!どこにも相談に行くところがないんですよ。