ここに来る人は薬物依存症ばっかり。5年も10年も薬を飲んで、「途中でやめたらあかん」と言われ続けてきた。診療に行っても5分間の面談。そして、また薬を飲まされて……。心療内科の増加に従って、患者がうなぎ登りになっているんです。「病院に行け」ばっかりで……。

 大学教授らは、社会に対してビシッと言わなあかんね。病院の数と患者の数が増えたって。心療内科は、パソコンさえあればいい。レントゲンも何もいらないでしょう。

 あちこちに行政の相談所があるんですが、この相談所にも私は腹立っています。「相談所に行きました。何もしてくれなかった。だから、岩場に立ちました」と言う人は、「いのちの電話」も含めていろんなところに相談をしています。

筆者 「いのちの電話」の効果についてはどのように考えていますか?

 目線が違うんやって。悩みを抱えてるから、そこへ相談するんでしょう。自分の悩みがあるから相談するんでしょう。その悩みを取ってくれるのかというと、何も取ってくれん。「30分しかないよ」、「15分しかないよ」と言われて切られてしまうんです。15分でいったい何が話せるのか!

「対策していますよ」ということをPRするためのものであって、本当に治すとか、悩みを聞くとかっていうものではない。あの人たちは、すべて相談に行くんですよ!こういう悩みがあるから何とかして欲しい、と相談に行っているんです!

本人からのヘルプを待たずに
「死んだらあかん」と積極介入

筆者 これまでの約18年半にわたって東尋坊で自殺防止活動をやってきて、今日までに766人(注:2023年時点では811人に増加)の自殺志願者を岩場で発見・遭遇し、自殺をやめさせ、ほぼ全員が再出発を果たしているとのことですが、なぜ自殺まで考えていた人がそれをやめ、再出発が果たせていると思いますか?

 大きく、三段階に分けて話をさせていただきます。

 一点目、私たちは、自殺を考えて東尋坊の岩場に立っている人がいないかと探し出し、その人に声をかけ、悩み事を聞き出し、その人を取り巻いている周辺の人に向かって、自殺に追い込まないようにしてもらうための注意や警告を発し、その人の生活環境の改善・調整を図っています。