10年前から新しい治療薬が登場
ただし、断酒は必須

 アルコール依存症になると、体内のアルコール濃度が下がった際に情緒障害や手の震え、幻覚などの症状が見られるようになります。これを「離脱症状」といいます。アルコール依存症の患者はこの離脱症状から逃れるために飲酒を繰り返すことになり、治療が難しくなってしまいます。

 アルコール依存症の治療は専門機関への入院などで断酒することになります。離脱症状に対処する必要があり、身体および精神症状を改善しなくてはならないため、段階を踏んで行われます。症状が回復した後は飲酒に対する問題を意識するためのリハビリが行われますが、これは家族の協力も仰ぎながらの長期にわたる治療となります。

「自助会などでのアルコール依存症の治療法としては、認知行動療法が用いられます。これは、そのことばかりを考えたり行動したりしているのを、患者自身の力で解きほぐして柔軟に考えたり行動したりできるようにするのを手伝う心理療法です」

 断酒や心理療法以外にはアルコール依存症への治療方法はないのでしょうか。

「近年、新薬も開発されています。10年ほど前には脳内で興奮を引き起こすグルタミン酸の作用を抑えて正常化させる薬、4年ほど前には脳内モルヒネの流れをブロックする薬が承認され、患者さんの症状に合わせて処方されています。ただし、これらの薬を使用する場合でも、断酒は必須です」

 依存症になってしまうと、かなりつらい治療が待っています。そうなる前に、飲酒を習慣化させないことが大切。現在高い頻度でお酒を飲んでいる人や、「お酒の量を減らしたい」と思っている人に向けて、芝崎先生からアドバイスをもらいました。

「目安としては、休肝日を週に2日ほどつくるとよいでしょう。脳の仕組みから考えると、あまり飲酒の頻度が高くない方がよいことは確かです。休肝日をつくれるかどうかは、依存していないかどうかをチェックする指標にもなります」

 また、悩みを抱え込んだときに、独りでお酒を飲んで発散する習慣がある人は、「依存症に陥る危険性が高まる」とのこと。

「誰かと一緒に、愚痴を聞いてもらいながら飲むようにする、もしくは他のストレス発散方法に切り替えるなど、独り酒を減らす方法を考えましょう」

 社会人ともなれば、打ち上げや会食などでお酒を飲む機会は多いもの。健康に留意しながら、楽しく飲みたいものです。

(監修/星薬科大学組織再生学研究室講師 芝崎真裕)