OGPPhoto by HasegawaKoukou

人手不足が深刻さを増す中、外国人労働者の実質的な受け入れ手段となってきた外国人の技能実習制度を見直し、新たに「育成就労制度」を設ける案が、自民党の特別委員会で了承された。企業の人手不足、外国人労働者、移民と難民の問題……。今、外国人労働力の受け入れについて、何が問題になっているのか。ジャーナリスト・田原総一朗氏、元厚生労働副大臣で、かつて自民党内で「外国人労働者等特別委員会」を立ち上げ委員長に就任した木村義雄氏、日本に逃れてきた難民のキャリア支援を行うNPO法人「WELgee(ウェルジー)」代表の渡部カンコロンゴ清花氏の3人が、「グローバル人材と外国人労働者」をテーマに議論した。(文/奥田由意、編集・撮影/ダイヤモンド社 編集委員 長谷川幸光)

外国人の技能実習生は
自由に転職することができない

田原総一朗氏(以下、田原) 「グローバル人材」という言葉が流行していますが、私はこの言葉にどことなく違和感があるんですよ。

渡部カンコロンゴ清花氏(以下、渡部) 「外国人社員に(日本や日本企業に)来てほしい」「日本から海外、海外から日本への留学生を増やしたい」というさまざまな文脈で、たしかに都合よく使われている印象がありますね。

田原さん田原総一朗(たはら・そういちろう)
1934年、滋賀県生まれ。ジャーナリスト。早稲田大学卒業後、岩波映画製作所や東京12チャンネル(現・テレビ東京)を経て、1977年からフリー。テレビ朝日系「朝まで生テレビ!」などでテレビジャーナリズムの新しい地平を拓く。1998年、戦後の放送ジャーナリスト1人を選ぶ「ギャラクシー35周年記念賞(城戸又一賞)」受賞。「朝まで生テレビ!」「激論!クロスファイア」の司会をはじめ、テレビ・ラジオの出演多数。近著に『さらば総理』(朝日新聞出版)、『人生は天国か、それとも地獄か』(佐藤優氏との共著、白秋社)、『全身ジャーナリスト』(集英社)など。2023年1月、YouTube「田原総一朗チャンネル」を開設。

田原 背景にあるのは、日本の人手不足でしょう。もはや限界に来ている。外国人労働者を受け入れなければ日本はもうやっていけない。

 外国人が働きながら技術を学ぶ、「技能実習」という制度がありますよね。建前としては、人材育成を通じた国際貢献とのことですが、実際には労働力確保の手段として使われていました。

 これを廃止し、新たに「育成就労」という制度が創設されることになりましたが、技能実習制度は具体的にどこが問題だったのでしょうか。

木村義雄氏(以下、木村) 地方の中小企業には技能実習生(以下、実習生)が来てくれない、実習生に対する人権侵害に耐えかねて失踪してしまう、といったことがあります。

 実は、実習生として来日した人の中には、制度のルールが厳しすぎて、ルールから外れてしまう人が続出しました。例えば、実習中は3年間、転職の自由がないんです。働く場所や職業内容を変えると、ルール違反、つまり、入管法違反になってしまう。そのため、今の仕事を辞めたくても転職もできない。

 結果、辞めても在留期間が切れないよう、難民申請をして滞在期間を延ばす人がいる。そういった難民申請は、ルールの束縛から逃れるための最終手段となっていて、結果、日本の「難民認定申請数」が増えているという実態があります。

田原 実習生が難民申請せざるを得ないほど、厳しいルールなのですか。

渡部 木村さんがおっしゃったように、この制度で来日した人には転職の自由がありません。そのため、職場でパワハラやセクハラがあっても別のところへ行く方法がないんです。きちんと働きたくても、帰国するしかありません。

 もちろん、良い職場もあるので、技能実習生を受け入れている現場のすべてが良くないと一律に見るのは間違っていますが。悪い職場にあたったとき、送り出し機関への手数料も払っているので、実習生は辞めるに辞められないんですね。

3名

田原 日本は人手不足なのだから、実習生をそのまま移民の働き手として日本社会が受け入れればいいと思うのですが、今の制度上、それが難しいということですか。

木村 そこにも問題があり、実習生の中には、移民として定住したいわけではなく、短期間でお金を稼いだら、すぐに本国へ帰りたいという人もいるということです。そして、そこに付け込むブローカーたちがいるんです。

田原 どういうことでしょうか。