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今週の音盤=心のビタミン ビジネス・パーソンのための音楽案内

【宇多田ヒカル「ファースト・ラブ」】
甘美、歓喜、絶望と嫉妬を謳いあげる少女の恋歌

小栗勘太郎 [音楽愛好家]
【第57回】 2013年4月18日
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 自由とは何か? と問われたら、どう答えますか?

 日々、厳しい競争に晒されているビジネスパーソンにとっては、自由で柔軟な発想こそ成功の鍵です。しかし、世の中は法律や規則に溢れています。常識という罠もあります。せめて、心の中の自由だけは守り抜きたいものです。

 米国草創期のジャーナリズムで辛辣な筆をふるったアンブローズ・ビアスは、こう答えています。

 『自由 (liberty n.) 想像力の所有物の中で最も貴重なものの一つ。』

 これは、ビアスの名を不朽にした新編『悪魔の辞典』(岩波文庫、西川正身・編訳)からの引用です。標題どおり、この辞典の収録語に対する定義・解説は毒の強い風刺に溢れています。例えば“安心”は『隣人が不安を覚えているさまを眺めることから生ずる心の状態』で、“笑い”は『体内で起こる痙攣であって、顔の造作を歪めると同時に、不明瞭な騒音を伴う』です。

 しかし、“自由”だけは、例外的にポジティブです。何の留保もなく価値を認め、自由に対する強靭な意思を明示しています。稀代の風刺家にとっても“自由”は別格だったのです。

 音楽においても自由こそは最重要の精神です。

 優れた音楽家は、常に新しく美しい曲を創ることを欲します。全ての制約を取り除く想像力の自由こそが新たな創造を可能とします。が、自由は世の常識と衝突し、時代の先を行く天才たちに苦難を課して来ました。

 しかし、時には、絶妙のタイミングで鮮やかに登場し、音楽を変え、自由の精神を体現して時代のアイコンとなる歌姫がいます。もちろん、世界一の音楽マーケット日本にも。

 というわけで、今週の音盤は宇多田ヒカル「ファースト・ラブ」(写真)です。

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小栗勘太郎 [音楽愛好家]

1958年生まれ、牡羊座のB型。某国立大学卒、米国滞在5年。公僕を生業とする音楽愛好家。著書は『音楽ダイアリーsideA』 『同sideB』(西日本新聞社)。『毎日フォーラム』誌にて「歴史の中の音楽」を連載中。


今週の音盤=心のビタミン ビジネス・パーソンのための音楽案内

ビジネス・パーソンは日夜、現場で闘って、日々、喜怒哀楽を感じる。実は音楽の現場も同じだ。だって、音楽もビジネスも、所詮、生身の人間が作る、極めて人間くさい営みだから。音楽には妙な薀蓄など不要かもしれないが、音楽が生まれる時には物語がある。それを知って聴けば、喜びが倍になり、悲しみが半分になるかもしれない。毎週1枚、心のビタミンになるような音盤を綴ります。

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