自由とは何か? と問われたら、どう答えますか?

 日々、厳しい競争に晒されているビジネスパーソンにとっては、自由で柔軟な発想こそ成功の鍵です。しかし、世の中は法律や規則に溢れています。常識という罠もあります。せめて、心の中の自由だけは守り抜きたいものです。

 米国草創期のジャーナリズムで辛辣な筆をふるったアンブローズ・ビアスは、こう答えています。

 『自由 (liberty n.) 想像力の所有物の中で最も貴重なものの一つ。』

 これは、ビアスの名を不朽にした新編『悪魔の辞典』(岩波文庫、西川正身・編訳)からの引用です。標題どおり、この辞典の収録語に対する定義・解説は毒の強い風刺に溢れています。例えば“安心”は『隣人が不安を覚えているさまを眺めることから生ずる心の状態』で、“笑い”は『体内で起こる痙攣であって、顔の造作を歪めると同時に、不明瞭な騒音を伴う』です。

 しかし、“自由”だけは、例外的にポジティブです。何の留保もなく価値を認め、自由に対する強靭な意思を明示しています。稀代の風刺家にとっても“自由”は別格だったのです。

【宇多田ヒカル「ファースト・ラブ」】<br />甘美、歓喜、絶望と嫉妬を謳いあげる少女の恋歌

 音楽においても自由こそは最重要の精神です。

 優れた音楽家は、常に新しく美しい曲を創ることを欲します。全ての制約を取り除く想像力の自由こそが新たな創造を可能とします。が、自由は世の常識と衝突し、時代の先を行く天才たちに苦難を課して来ました。

 しかし、時には、絶妙のタイミングで鮮やかに登場し、音楽を変え、自由の精神を体現して時代のアイコンとなる歌姫がいます。もちろん、世界一の音楽マーケット日本にも。

 というわけで、今週の音盤は宇多田ヒカル「ファースト・ラブ」(写真)です。