マネジメントたるものは<br />自らの打率を知り上げていかねばならないダイヤモンド社刊
【絶版】

「事業の将来は、投資、人事、イノベーション、戦略についての、今日のマネジメントの仕事ぶりによって左右される。しかもこの4つの分野において、打率を測定することは可能である。マネジメントは自らの打率を知ることによって、それを向上させることができる」(『乱気流時代の経営』)

 第一に、投資については、ほとんどの企業が、決定権をトップマネジメントに留保し、きめ細かく手順を決め、時間をかけて検討を行なっている。ところが決定後のことについては、注意を払わない。そもそも投資後のことについては、知りえようさえなくなっている。

 実行の遅れや資金の不足には気がつく。しかし、工場が稼働した後の業績については、計画との比較において評価を行なっていない。つまり、投資の打率を測定していないことになる。

 第二に、人事が究極のマネジメントであることは誰もが知っている。あらゆる意思決定がなんらかの問題に直面する。今日行なう意思決定が成功するか否かは、明日のマネジメントの能力次第である。つまり、今日の人事次第である。

 しかし、人事の適切さは知りえようがなくなっている。そのため人事の打率を測定していない。

 しかも、人事を優れたものにするのはフォローアップである。このフォローアップのためにも、人事の打率は、常時測定していかなければならない。

 第三に、イノベーションのための活動の成果は予測不能とされている。しかし現実に、イノベーションに優れた企業がある一方において、同業他社の後を追うだけの企業がある。

 イノベーションに優れた企業には共通点がある。イノベーションにおける自らの打率を測定していることである。成果からのフィードバックに基づいてイノベーションをマネジメントしている。

 第四に、マネジメントの仕事ぶりは、戦略の成否によっても評価される。戦略において期待したことは本当に起こったか。目標は適切だったか。目標は達成されたか。

 戦略もまた、期待を明確化し、それらの期待に照らして成果をフィードバックしなければならない。

 「優れたマネジメントは、自らの三振とヒットを自覚している。そして、何にもまして、何が得意か、何が不得意かを知っている」(『乱気流時代の経営』)