民間人があまりにも簡単に銃にアクセスできてしまう銃社会アメリカ。米国社会で人々は銃とどのように向き合いながら生活しているのか。アメリカにおける銃社会の「本丸」とも言えるのが、コロラド州だ。コロンバイン高校での銃乱射事件や、昨年のアローラ市の映画館での無差別射殺など、ショッキングな銃犯罪で知れ渡った同州。そのコロラド大学のキャンパスは、まさに銃問題の象徴的な場所。全米でも珍しく、なんとキャンパス内への銃の持ち込みが可能なのである。バックパックにピストルを入れて授業やサークルに出席する学生たち。そして、そんな学生たちの前で毎日授業を行う教授たち――。彼らはいったい、どんな本音を持っているのだろうか。「銃のある教室」の現実を追った。(取材・文・撮影/ジャーナリスト・長野美穂)
(下)広大な芝生のキャンパス
問われる銃社会アメリカの象徴
自由に銃を持ち込めるキャンパス
青空にそびえるロッキー山脈がまぶしいコロラド州。デンバーから車で約1時間走ると、広大な山々がすぐ目の前に迫り、ボルダーの街に着く。
コロラド大学のボルダー・キャンパスでは約3万人の学生が学び、7000人の教職員が働いている。
実はここ、全米でも珍しい「銃持ち込みOK」のキャンパスなのである。過去の犯罪歴の有無などのバックグラウンド・チェックをパスし、銃の安全トレーニングを受け、さらに21歳以上なら、州の銃携帯許可証を得ることができ、学内でハンドガンを携帯することが可能だ。
バッグや服の中などに入れて、外から見えないようにするだけでいい。学生だけではなく、教授たちが上着の内側にピストルを装着し、教壇に立つのもオッケーだ。
カフェテリアや教室や研究室などに銃を持ち込むのは合法で、それをいちいち大学に届け出る義務はない。つまり、教室内で誰が、そして何人が銃を携帯しているか、周りを見回しても全くわからないのがこのキャンパスなのである。
折しも、米国では、昨年末に東部の小学校で起きた乱射事件で多くの児童の命が奪われたのを機に「銃規制強化論」がかつてない規模で盛り上がっている。
今月に入ってからは、ハンティングが盛んなケンタッキー州で、5歳の男の子が2歳の妹をライフルで誤って撃ち、死なせてしまうというやるせない事故も起きた。