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日本を元気にする経営学教室III

電機メーカーは小売に進出せよ
仏フナックとアップルストアの事例を考える
――神戸大学大学院経営学研究科教授 松尾博文

シリーズ「オペマネの思考法」(3)

松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授],滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]
【第7回】 2013年3月18日
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 シリーズ「オペマネの思考法」の第1回では、戦略を立ててから事業プロセスを考えるのではなく、事業プロセスから戦略を組み立てる思考法を紹介した。第2回では、SWOT分析の誤用で見受けられる自社の強みを前提とする戦略立案は、現状維持の論理展開であること、一方、機会を機敏に利用し、脅威に真正面から向き合うことができるマイケル・デルの問題解決の思考法は、論理展開の向きが逆であることを解説した。SWOT分析で本末転倒しないようにしていただきたい。

 今回は、ものづくりと技術力という強みをなんとか生かして、脅威に対処しようとしてうまくいっていない日本の電機メーカーを例に、サプライチェーン・マネジメント(SCM)という事業プロセスから考える思考法を適用してみる。SCMというと、電機メーカーより上流の供給サイドの話に限定されがちだが、下流のサプライチェーンを考えることから始めなくてはならない。

家電量販店は憂鬱な場所

 家電量販店に行くと憂鬱になる。意味不明の商品の陳列、山積みは、ドンキホーテを彷彿させる。何かこの中に宝ものが埋まっているというのであろうか。どのメーカーのどの製品が私の求めているものか、また、その製品の使い方をだれが教えてくれるのだろうか。家電量販店のターゲットは、新居を構えた家族か、家電オタクだけなのか。

 先日、10年使ってもまだ十分使えるプリンターが紙詰まりを起こし、メーカーは修理部品がないから何もできないということで、しかたなしに量販店に行って別のメーカーの新品を物色した。量販店の店員にプリンターの紙詰まり、補修部品についての質問をしても、答えていただけなかった。あまり商品については知らないようである。どうも量販店というところは、お客さんの方が先に商品について調べておいて、棚にある商品について、値段のみを交渉するというビジネスモデルをとっているらしい。

 家電メーカーにとっても量販店は憂鬱な場所であろう。せっかく、ものづくりと技術力を結集して、つかみづらい消費者の志向を想定して造ったものをそのように売られては。電気製品のコモディティ化(価格のみでの競争となる汎用品化)が、量販店で決定的なものとなっていると言っても過言ではないだろう。

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松尾博文 [神戸大学大学院経営学研究科教授]

まつお・ひろふみ
京都大学工学部数理工学科卒業。1984年米マサチュ-セッツ工科大学大学院経営学研究科博士課程修了。米ペンシルバニア大学経営大学院客員準教授、米テキサス大学オースティン校経営大学院教授(Fred H. Moore Professorship)、筑波大学社会工学系教授を経て、2004年から神戸大学大学院経営学研究科教授。専攻はオペレーション・マネジメントとサプライチェーン・マネジメント。国際的学術雑誌の論文多数、編集委員を歴任。現在、日本オペレーションズ・マネジメント&ストラテジー学会会長。

滝波純一 [ヘイ コンサルティング グループ プリンシパル]

たきなみ じゅんいち/京都大学工学部卒業、同大学院応用システム科学修士、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)経営学修士(MBA)。東レ株式会社、ボストン コンサルティング グループを経て、2009年より現職。2010年より同社コンサルティング部門責任者。医薬品、消費財、流通、情報通信等の幅広い業界に対し、グローバル人事制度構築、リーダー育成、M&A支援等、幅広いコンサルティングを実施。


日本を元気にする経営学教室III

【シリーズ「オペマネの思考法」/松尾博文】
オペレーションズ・マネジメント(オペマネ)は欧米のビジネススクールでは必須科目である。オペマネは、製造業とサービス業の事業プロセスを対象とする学問体系で、企業と組織の事業プロセスを中心に、製品、顧客、マーケティング、経営、戦略を考える科目である。本シリーズでは、オペマネの基本的な思考法を解説し、日本の製造業が陥っている問題点の解決策を、事業プロセスの見直しというオペマネの方法論から議論する。簡単な事例、極端な事例、理論と実践を取り混ぜて、論理的に考えるための糧(Food for thought)を提供することを目指す。

 

【シリーズ「カルチャー・トランスフォーメーション」/滝波純一】
企業文化は経営そのものである」というのは、1990年代に瀕死のIBMをよみがえらせたルイス・ガースナーの言葉である。多くの経営者は企業文化が業績に及ぼす影響がいかに大きいか知っている。一方で、企業文化を変革することが、いかに難しいかも、多くの人の知るところである。近年、人事・組織の領域では、日本よりも、海外の方が一歩進んでいると言わざるを得ないのだが、海外では「カルチャー・トランスフォーメーション」として、多くの企業が企業文化の変革に取り組んでおり、そこから有効な方法論も見出されつつある。事業環境が激変する中、日本企業にとっても企業文化の変革は喫緊の課題であり、海外での取組・確立されつつある方法論から学ぶべき点が多いのではないだろうか。本連載では、「カルチャー・トランスフォーメーション」について、紹介していきたい。

 

「日本を元気にする経営学教室III」

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