パイロットの父からもらった、
後にも先にも、たったひとつだけのアドバイス

 私が通った高校の校歌には、『史記(しき)』(中国の通史)から引用した一節が使われています。

「桃李(とうり)もの言わざれども下自(したみずか)ら蹊(みち)を成す」

「桃や李(すもも)は何も言わないが、美しい花に惹かれて人が集まり、その下には自然に道ができる」という意味です。「あなたも、そんな人を惹きつける人になりなさい」校歌には、そんな思いが込められていました。

 人の笑顔は、「美しい花」と同じです。その笑顔の下に、人は引き寄せられます。「もっとも早く信頼関係を築く方法」とは、「笑顔を見せること」なのですね。

 CA(客室乗務員)の試験に7回落ち、8度目の正直でCAの採用試験に合格した日、パイロットをしていた父は、後にも先にもひとつだけ、私にアドバイスをくれました。

「なにがあっても、笑顔でいなさい」

ほどなくCAになった私は、父からもらった「言葉の重み」を実感することに…。

「午前3時に起きるのは、しんどい」
「長時間におよぶフライトは、体力的にきつい」
けれど、それでも笑顔を見せなければ、クルーやお客様とのコミュニケーションはとれません。
 たとえ体調が悪くても、たとえ落ち込んでいても、制服を着れば、私たちCAはプロにならなくてはなりません。

 笑顔を見せる気にならないときでも、お客様やクルーのことを思って、自分から笑うようにする。すると本当に、自然と楽しい気持ちになってくるのです。

 1度や2度、笑顔を見せたところで、相手の印象には残りません。
 まわりの人から「あの人は、いつも笑顔だよね」「あの人は、笑顔が素敵な人だよね」と印象づけるには、いつ、どこで、だれといるときでも「笑顔」を見せることが大切です。でもその笑顔が、相手も自分も、楽しい気持ちにさせてくれるのです。