サントリーホールディングス(HD)が、子会社のサントリー食品インターナショナルの今夏の上場を計画している。なぜ今、上場が必要なのか、財務諸表にその理由が表れている。

「ガバナンスは上場企業と同じ水準にある。上場を考えなければならないのは、まとまった資金需要が出てきたときだ」。かつて佐治信忠・サントリーホールディングス(HD)会長兼社長はこう語った。その言葉を裏づけるかのようにサントリー食品インターナショナルが今夏、上場する。調達目標額は約5000億円、時価総額はキリンHDやアサヒグループHDに続く1兆円超えが確実視される。

 低収益・低成長に悩む飲料業界の中で、サントリーHDの近年の業績の堅調さは際立っている。2011年度まで7期連続の増収増益。統合したオランジーナ・シュウェップス社(フランス)の会計期変更の影響で減益したが、それを除く本業の業績で見れば、12年度も売上高で4.2%、営業利益で0.5%の増収増益だった(図(1))。非上場ながら、連結売上高では大手酒類4社の中でキリンに次ぐ2位、営業利益でアサヒにほぼ並ぶ3位だ(図(2))。

 グループで上場企業は2000年に上場した外食子会社のダイナックのみのサントリー。HDではなく食品を上場させる理由はいくつかある。

 まず「飲料・食品事業が名実共にHDの最大の中核事業である」という点だ。ビールが中心のキリンやアサヒなどと異なり、サントリーは事業構造が飲料・食品セグメントに偏る。12年度の連結売上高の52%、営業利益で72%を飲料・食品セグメントで稼ぐ構図だ。

 ビール事業はシェア3位で08年に事業開始以来初めて赤字を脱却したばかりだが、飲料事業はシェア28%の日本コカ・コーラに次ぐ20%で2位(飲料総研調べ)。3~5位にシェア10%前後でダンゴ状態になっているアサヒ飲料、伊藤園、キリンビバレッジから頭一つ抜け出る。