FPパートナーに業務改善命、便宜供与を行った生保8社に報告徴求命令を出した金融庁の真意とは?

8月6日、「マネードクター」を運営する生命保険系の大型乗り合い代理店FPパートナーに業務改善命令が出されたと同時に、便宜供与を行っていた生保会社8社に対して報告徴求命令が出された。当初の報道から1年超の期間を経て下された行政処分となるが、金融庁の真意はどこにあるのか。そこで連載『ダイヤモンド保険ラボ』の本稿では、今回の事案を深掘りする。(ダイヤモンド編集部編集委員 藤田章夫)

FPパートナーに業務改善命令
生保8社に報告徴求命令も

 8月6日夕刻、「マネードクター」を運営する生命保険系の大型乗り合い代理店FPパートナー(以下、FPP)に対し、金融庁が保険業法に基づく業務改善命令を発出した。さらにその後、金融庁は生保8社を個別に呼び出した上で、報告徴求命令を出すに至っている。

 かねてFPPは、生保会社からの便宜供与の実績に応じて、顧客に推奨する商品を選定しているのではないかとの疑念を持たれてきた。その一例が、1年ほど前の2024年6月17日に保険ラボで配信した『乗り合い保険代理店最大手・FPパートナーの社内キャンペーンに透ける、生保会社との「もたれ合い」の構図』だ。

 これは、22年9月にFPPが東証グロース市場に株式上場し、それからわずか1年後の23年9月に東証プライム市場に移行したことを記念して行ったキャンペーンだ。

 アフラック生命保険など特定の複数生保の商品にのみ「割増評価」がなされており、それらの商品を販売し上位にランクインすれば、FPPの保険募集人には巨額なストックオプションが報酬として支払われるという仕組みだった。

 その報酬総額は実に2億円を超えており、募集人にとって割増評価のある生保会社の商品を推奨するインセンティブが強く働いていた。故に、比較推奨が歪められる恐れがあった。

 そして、割増評価がなされた生保各社は、FPPに対して便宜供与を行っていた。募集人の紹介やリーズ(保険の見込み客)の提供、FPPが契約譲受と呼んでいる廃業代理店などのあっせんといった本業支援に加え、FPPが運営する来店型店舗「マネードクター・プレミア」にあるデジタルサイネージへの高額な広告掲出や研修の共同運営などだ。

「マネードクター」を運営するFPパートナー
金融庁から業務改善命令を受けた「マネードクター」を運営するFPパートナー Photo by Akio Fujita

 11年前に改正された保険業法では比較推奨販売のルールがつくられた。当時は、手数料の多寡によって推奨される商品が選定されるという事態が多発していたが、それらはいったん収束した。ところが、手数料が便宜供与に姿を変えることで歪んだ推奨販売が再発してしまったわけだ。

 そのことを問題視した金融庁は、24年12月からFPPに検査に入った。東京都文京区にあるFPP本社だけでなく、各地の支社にも検査の手が伸びている。また、それと同時にFPPに便宜供与を行っていた生保各社にも複数回のヒアリングを行い、便宜供与の実態について回答を求めた。その結果が、今回のFPPに対する行政処分と便宜供与を行ってきた生保8社に対する報告徴求命令というわけだ。

 もっとも、生保側はすでに何度も金融庁に説明を行ってきたが故に、このタイミングでの報告徴求命令に対して「今さら何の報告を求めるのか……」と、いぶかしむ声が業界内で上がった。

 そこで次ページでは、金融庁がFPPを処分した理由の詳細に加え、なぜこのタイミングで生保8社に対して報告徴求命令を出したのか、その真意について深掘りする。一口に報告徴求命令といっても、そこにはさまざまな思惑が存在するからだ。