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インキュベーションの虚と実

エンタープライズ市場の時代がやってきた!
クラウドやUXの進化で新たに生まれるニーズとチャンス

本荘修二 [新事業コンサルタント]
【第27回】 2013年5月27日
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 この数年、スタートアップのテーマは、コンシューマー向けの事業が大多数だった。特に日本では顕著で、ソーシャルウェブやスマートフォンなどがそれを加速した。

 しかし、コンシューマー向けビジネス一辺倒のスタートアップイベントや、それらを紹介する報道に、筆者は違和感というか、何とも言えない寂しさを感じることも少なくなかった。エンタープライズ(さらに広く言えばB2B、法人向け)ビジネスを展開するスタートアップはどこに行ってしまったのか、と思っていた。

 一方で米国では、エンタープライズがスタートアップのテーマとして注目を浴びている。もともと米国のエンタープライズ分野は大きなポテンシャルがあり、すでに2~3年ほど前から台頭している。その上、その領域は従来考えられてきた分野から拡大が見られ、次世代のエンタープライズ時代の到来と呼んだ方がよいだろう。

エンタープライズ市場の転換期
次世代ソリューションを求めるユーザー企業

 次世代のエンタープライズ時代の到来を象徴する、ビッグ・ニュースを2つ紹介しよう。

 まず、2011年10月のヒューレット・パッカードによるAutonomy(パターン認識技術を応用したエンタープライズサーチやナレッジマネジメントなどのアプリケーションを提供)の110億ドル(約1兆1000億円)での買収だ。史上最大規模のソフトウェア会社の買収として騒がれた。

 そして、2012年10月、クラウドによる人事ソリューションを提供するWorkdayが、45億ドルの時価総額でニューヨーク証券取引所にIPOしたことだ。しかも同日74%の値上がりをし、現在110億ドル(約1兆1000億円)の時価総額となっている。

 この一連のニュースは、二つの意味を持つ。一つは、エンタープライズ分野のポテンシャルが膨大であるということだ。これは、エンタープライズ・ソリューションのベンチャーが、1兆円超の評価をつけたことが示している。

 もう一つは、従来のエンタープライズ事業の課題の大きさだ。

 従来型のエンタープライズ・ソリューションは、やたらと“重たい”ものが多かった。つまり、ライセンスが高額で長期の契約となり、ERP(統合基幹業務システム)のように全社的に関わるようなものだと大きな金額となり、頭痛の種になっていた。

 しかも、ソフトウェア自体が重たく、コンサルティングやカスタマイズに多額の追加的支払いが生じる。4割以上の企業で予算を超過したとの報告もある。大企業がERPを導入するとトータルで数十億円かかるのは不思議ではない。また、複雑さゆえにソフトウェア・ベンダーへの依存度も大きい。したがって、ユーザー企業は一旦契約すると、ソフトウェア・ベンダーに手足を縛られたような、言わばロック・インされた状況に追い込まれやすい。

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本荘修二 [新事業コンサルタント]

多摩大学客員教授、早稲田大学学術博士(国際経営)。ボストン・コンサルティング・グループ、米CSC、CSK/セガ・グループ会長付、ジェネラルアトランティック日本代表を経て、現在は本荘事務所代表。500 Startups、NetService Ventures Groupほか日米企業のアドバイザーでもある。


インキュベーションの虚と実

今、アメリカでは“スタートアップ”と呼ばれる、ベンチャー企業が次々と生まれている。なぜなら、そうした勢いある起業家たちを育てる土壌が整っており、インキュベーターも多く、なにより、チャレンジを支援する仕組みが存在するからだ。一方の日本はどうなのだろうか。日米のベンチャー界の環境の変化や最新のトレンドについて、25年にわたってベンチャー界に身を置いてきた本荘修二氏が解説する。また日本でベンチャーが育ちにくいと言われる背景を明らかにし、改善するための処方箋も提示する。

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