【マンガ】「今月分の給料、しばらく待ってくれないか…」頼み込む社長にボス社員が発した「救いのひと言」『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

三田紀房の起業マンガ『マネーの拳』を題材に、ダイヤモンド・オンライン編集委員の岩本有平が起業や経営について解説する連載「マネーの拳で学ぶ起業経営リアル塾」。第19回では、給料遅配やそんな苦境から復活した企業について解説する。

給料遅配への反発をボス社員が一喝!

 なけなしの運転資金であった800万円を社員の1人・小池定吉に持ち逃げされてしまった主人公・花岡拳。

 原因を作った経理の菅原雅弘は妻とともに土下座して謝罪するが、花岡たちの会社・花岡企画が迎えた経営危機が解決するわけではない。最終的に花岡は社員を集め、「今月分の給料、しばらく待ってくれないか…」と給料遅配を受け入れるよう頼み込む。

 当然ながら社員から反発の声が上がったが、縫製スタッフのリーダー格であるヤエコこと片岩八重子がその声を押さえ込んだ。かつては花岡と対立していたヤエコだったが、「今回の一件は私達従業員の不始末が原因」として、ほかのメンバーを諭す。

 その後花岡と2人きりになったヤエコは、この状況を作った遠因でもある一ツ橋物産・井川泰子と向き合うためにも、この状況を乗り越えたいと花岡に語るのだった。

 ヤエコのサポートもあって社員を納得させた花岡は、取引のある生地の卸業者の元に向かう。支払いの遅延を求められた卸業者は激怒するが、花岡はなんとか4日間だけ支払いの猶予を得る。

 たった4日での逆転の機会を模索するべく、花岡は格闘技イベント「豪腕」の関係者向け説明会に参加するのだった。

給料遅配の苦境から、上場まで返り咲いた企業の正体

漫画マネーの拳 3巻P29『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク

 メディアのニュースにはなることはほとんどないが、苦戦するスタートアップや新興企業においては、給料遅配はまれに起こりうることでもある。

 ダイヤモンド・オンラインで公開された下山進氏の記事《給料遅配→社員に借金のドン底から「日本一売れてる月刊誌」が生まれた驚きのワケ》では、2023年に上場したハルメクホールディングスがかつては給料遅配にとどまらず、民事再生法の適用申請を行った過去が紹介されている。

 ハルメクホールディングスは、月刊誌において日本最大部数となる、約47万人の定期購読者を抱える雑誌『ハルメク』を出版する企業だ。

 同社はその前身であるユーリーグ時代に、給料遅延や手形の不渡りを起こして民事再生法の適用を申請。その後プライベートエクイティファンド(未上場企業の株式に投資するファンド)のJ-STARが買収した。

 さらにJ-STARが経営体制を立て直す中で、当時の経営陣がMBO(Management Buyout、経営陣による企業の買収)して、現在の経営体制を構築。そこから東京証券取引所グロース市場に上場を果たすまでにいたった。

 このように給料遅配のような大きな苦境を経験しても、その後輝かしい復活を遂げた企業はある。しかし給料遅配が起こるということは、その先に手形の不渡りや倒産といった苦しい局面を迎える可能性も高いわけだ。花岡たちは今、苦境のまっただ中にいる。

 豪腕の説明会の場で、あさってに開催予定の記者会見の話を聞いた花岡。その会見の場に、起死回生のチャンスを見いだす。

漫画マネーの拳 3巻P30『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク
漫画マネーの拳 3巻P31『マネーの拳』(c)三田紀房/コルク