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勝ちっ放しのガンホー、勢いを失ったグリー…
主役交代で不透明さを増す業界の未来は?
――ソーシャルゲーム・バブル崩壊後の展望【中編】

小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授],石島照代 [ジャーナリスト]
【第38回】 2013年6月12日
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 この、コンプガチャ騒動後も売上高が低下しなかったにもかかわらず、利益は低下し続けているという「増収減益」が持つ意味は決して甘くない。各社の有価証券報告書では増収減益の理由が明記されていないが、理由は以下の3つが考えられる。

1)新規で立ち上げているゲームの成功率低下による損失増大(市場での生存競争の激化)
2)スマートフォンシフトによるビジネスルールの変化
3)スマートフォンの高性能化に合わせた、リッチコンテンツ開発のためのコスト上昇

 まず理由の1)からだが、コンプガチャ騒動の影響と言うよりは市場構造が変化した(=市場が成熟化した)、と考えるのが自然だろう。つまり、「ポチポチ押すだけのソシャゲは飽きられた」ということである。

 加えて、ソーシャルゲーム開発会社は歴史が浅く、技術力や開発ノウハウといった「ゲーム会社としての地力」が弱い企業が多い。市場が急成長していたガラケー時代は、内容がほぼ同じで外観だけを変えるという「ガワ替え」をしてゲームタイトルを大量に生み出していた。

 実際に、ある企業の2011年度四半期決算短信には、収益向上の施策として「高ARPU(*2)ジャンルのゲームに新作タイトルを集中(『ガワ替え』による短期・低コスト化)」の文字が躍る。「自社のコンテンツを遊んでいるユーザーがこの決算資料を見てどう思うか」を考えない無神経さはさておき、この傾向は今も変わっていない。この企業は大幅な赤字決算となり、業務戦略の立て直しを迫られていたが、その際に選んだ方法もまた「ガワ替え」なのである。

 こういった企業の姿勢からは、新しい楽しさを生み出そうというイノベーティブさ、顧客を楽しませようという意味での社会的な使命感、次のビッグプレイヤーになろうという意欲も感じない。ここまで(露悪的なほどに)正直な企業はかなり特異である。しかし、技術力・開発力の点でさほど差がないとすると、ガンホーやグリー、ディー・エヌ・エーなど現在のトップクラスに代わる企業が育つ可能性は少ないのではないか。

(*2)Average Revenue Per Userの略。「アープ」と発音することが多い。通信事業における、加入者一人あたりの月間売上高。消費者視点なら、携帯会社やSNS系事業者に毎月払っている額。ちなみに、課金ユーザー1人あたりの平均売上金額はARPPU(Average Revenue Per Paid User)と呼ばれ、ソーシャルゲーム業界で重視されるのは後者。

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小山友介 [芝浦工業大学システム理工学部教授]

1973年生まれ。芝浦工業大学システム理工学部教授。2002年京都大学大学院博士課程修了。博士(経済学)。東京工業大学助教等を経て現職。東工大時代に経済シミュレーション研究に従事、そこで学んだコンピュータサイエンスの知識を生かしてゲーム産業研究を行なう。専門はゲーム産業を中心としたコンテンツ産業論と社会情報学。2016年6月末に『日本デジタルゲーム産業史』 (人文書院)を刊行。

 

石島照代 [ジャーナリスト]

1972年生まれ。早稲田大学教育学部教育心理学専修を経て、東京大学大学院教育学研究科修士課程在籍中。1999年からゲーム業界ウォッチャーとしての活動を始める。著書に『ゲーム業界の歩き方』(ダイヤモンド社刊)。「コンテンツの配信元もユーザーも、社会的にサステナブルである方法」を検討するために、ゲーム業界サイドだけでなく、ユーザー育成に関わる、教育と社会的養護(児童福祉)の視点からの取材も行う。Photo by 岡村夏林

 


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ゲームソフトをゲーム専用機だけで遊ぶ時代は終わった。ゲーム機を飛び出し、“コンテンツ”のひとつとしてゲームソフトがあらゆる端末で活躍する時代の、デジタルエンターテインメントコンテンツビジネスの行方を追う。

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