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上久保誠人のクリティカル・アナリティクス

米中首脳会談で「新型大国関係」を強調
中国の台頭は日本にとって必ずしも悪い話ではない

上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]
【第62回】 2013年6月21日
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 バラク・オバマ米大統領と習近平中国国家主席の米中首脳会談が開催された。2日間、合計8時間に及んだ対話では、「新しいタイプの大国関係」を提起する習主席と、中国の台頭を牽制するオバマ大統領が激しい駆け引きを演じた。サイバー攻撃や北朝鮮による核開発問題、尖閣諸島を巡る日中の対立など、議論は多岐に及んだ。

 日本国内では、米中の首脳交流が加速することで、日本が「蚊帳の外」に置かれてしまうという懸念が広がっている。実際、習主席は「太平洋をまたぐ中米協力」を繰り返し強調した。それは、太平洋を米中二大強国が太平洋を分割統治していくことを示唆したものだ。また北朝鮮問題でも、米中首脳は北朝鮮の非核化で足並みを揃えつつある。しかし筆者は、日本にとって中国の台頭が、必ずしも悪い話ではないと考える。

中国の軍事拡大、海洋進出は
日米安保体制を緊密にする

 米海兵隊と日本の自衛隊は、米国カリフォルニア州沖のサンクレメンテ島訓練場で、共同訓練を行い、ヘリコプターや揚陸艇を使った上陸作戦が公開された。これは、中国に尖閣諸島など日本の離島が占領された場面を想定した訓練であり、中国政府が激しく反発して中止を申し入れていた。しかし、米国はそれを拒否し、予定通りに訓練を実施した。

 つまり、米中関係が緊密化しても、米国には絶対に譲れないものがある。その1つが、中国の太平洋進出の阻止なのではないだろうか。元々、地政学的に「ランドパワー」とされる中国は、海洋進出への関心は薄かった(前連載第5回を参照のこと)。しかし近年、東シナ海および南シナ海で、中国が強引に領有権を主張するようになった。「ハワイより東を米軍、西を中国海軍が管理しよう」と米国に持ちかけるほどに、軍事的な拡張政策を推進しているのだ。

 中国は、東シナ海・南シナ海での領土問題を「核心的利益」として、周辺国に譲歩する姿勢を見せない。一方、「地政学的観点」から考えると、米国にとっても、それは譲歩できないものである。

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上久保誠人 [立命館大学政策科学部教授、立命館大学地域情報研究所所長]

1968年愛媛県生まれ。早稲田大学第一文学部卒業後、伊藤忠商事勤務を経て、英国ウォーリック大学大学院政治・国際学研究科博士課程修了。Ph.D(政治学・国際学、ウォーリック大学)。博士論文タイトルはBureaucratic Behaviour and Policy Change: Reforming the Role of Japan’s Ministry of Finance。

 


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国際関係、国内政治で起きているさまざまな出来事を、通説に捉われず批判的思考を持ち、人間の合理的行動や、その背景の歴史、文化、構造、慣習などさまざまな枠組を使い分析する。

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