ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
ジャーナリストキャンプ報告「震災後の福島に生きる」

「どこにも行けない、ここにも居られない」
“フィリピンパブと仮設住宅”で揺れる女性たち

菅原聖司
【第5回】 2013年6月24日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

「まずは日本人が先だから」――祖国に帰ることも、第二の故郷に戻ることもできない被災したフィリピン人女性の日常から見えてきた「現実」とは。いわきの「昼と夜」に迫った(取材・文・撮影/ジャーナリスト 菅原聖司〈すがはら・せいじ〉)

中傷でも、美談でもなく

 「居場所がないの、どこにも。この店にいるフィリピン人は、行く場所がないからここで我慢してるだけ。地震が起きてから、国に戻ることも、町を出ていくこともできないから」

 いわき市駅前の繁華街、雑居ビルの2階に佇むフィリピンパブ。ホステスとして働くエステーラさんは、大きな瞳を少し曇らせ、ぽつりとつぶやいた。

 「日本にいると、時々自分の人生がわかんなくなることがあるの。やっぱり『普通の人生』がいい。あれから、特にそう思うようになったわね」

会話中に煙草をくゆらせるエステーラさん

 薄暗い店内では、常連客の中年男性がカラオケで演歌を熱唱していた。接客中のホステスたちはマラカスを振ったり、額から光を放つ「ハゲヅラ」をかぶりながら、甲高い声で合いの手を入れていた。

 「みんな、こう見えて結構大変なのよ」

 ソファーで騒ぐ客から少し離れて、僕たちはカウンターで3時間以上も話し込んでいた。

 東日本大震災後、外国人は日本から「脱出した」と非難めいた論調で語られることもあれば、「外国人にもかかわらず」日本に残って復興に尽力しているという美談も伝えられた。

 しかし、そうした報道の陰で「被災した外国人の日常」は、ほとんど描かれずじまいだったのではないだろうか。偶然訪れたパブで出会った彼女と話しながら、そんな思いが頭をよぎっていた。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事


ジャーナリストキャンプ報告「震災後の福島に生きる」

 原発事故報道に埋もれた「フクシマ」のリアルに、百戦錬磨のジャーナリストたちが迫る。新聞協会賞受賞、朝日新聞「プロメテウスの罠」の依光隆明。「フクシマ論」で一気に注目を浴びた気鋭の社会学者・開沼博。地元東北を代表する地方紙、河北新報で気を吐く編集委員・寺島英弥。ネットの視点を持つ前ニコニコニュース編集長・亀松太郎。そしてデータジャーナリズムの第一人者・赤倉優蔵。5月、一斉に福島県いわき市に入り、グループを率いて競い合うように取材した彼らが、震災から二年を過ぎた被災地で見たものは。

「ジャーナリストキャンプ報告「震災後の福島に生きる」」

⇒バックナンバー一覧