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ニッポン 食の遺餐探訪

日本人が愛する「昭和の麦茶」で世界を目指す
暑い職場で働く麦茶焙煎職人の熱さ

樋口直哉 [小説家・料理人]
【第8回】 2013年7月3日
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 〈つぶまる〉という麦茶をつくっている工場に取材に行くと言うと、何人かの友人はその夏の定番飲料について熱く語り出した。

煮出し麦茶〈つぶまる〉

 「うちも飲んでいる」「麦茶では最強」「〈つぶまる〉は他のと違う」

 麦茶には独特の魅力がある。

 「うちは子どもの頃、砂糖を入れていたよ」

 「え、砂糖? それはありえん!」

 なぜか麦茶について語っていると『砂糖を入れるのはありやなしや』という論争まで起きることがある。

 とにかく、麦茶の味が一際おいしいのは、その味が日本人の原風景を含んでいるからだろう。夏の暑い日に家に帰ってきて、冷たい麦茶を飲み干した、というような経験を日本人なら誰しもが持っているからだ。

もともと貴族の飲み物だった麦茶
冷蔵庫の普及とともに庶民の定番に

 取材に伺う前に小川産業の定番商品〈つぶまる〉は飲んでいた。ちょっと高級なスーパーや百貨店、あるいは少し品揃えにこだわりがある食材店なら並んでいる麦茶だ。

 はじめて飲んだとき、他のメーカーのものとは世界の異なる味に驚いた。

 まず雑味がなく、甘みがある。苦味やエグミがないからすんなりと身体に入ってくる感じがする。後味はとても軽く、すっきりとした飲み心地だ。

 貴族の飲み物だった麦茶は江戸時代から屋台で飲まれ出した。今のように一般家庭の定番になったのは、昭和30年代、冷蔵庫が普及してからである。

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樋口直哉 [小説家・料理人]

1981年生まれ。服部栄養専門学校卒。料理人として活動する傍ら、2005年、『さよならアメリカ』で群像新人文学賞を受賞し、小説家としてデビュー。ほかの作品に『月とアルマジロ』(講談社)、『大人ドロップ』(小学館)、『星空の下のひなた。』(光文社)、『ヒマワリのキス』(徳間書店)、『アクアノートとクラゲの涙』(メディアファクトリー)がある。

 


ニッポン 食の遺餐探訪

和食を世界遺産に、という動きが農林水産省を中心にはじまっている。日本料理はここ十年余りの世界的な流行になり、外国の料理人の多くも関心を持っていて、誰もがそれを理解しようとしている。しかし、当の日本人の多くは日本料理を理解できていないのではないか。そこでこの連載では、日本の食を支えている道具や食材をつくっている生産者、職人を訪れて、私たち日本人が知らない日本の“食の遺餐”を紹介していく。 

「ニッポン 食の遺餐探訪」

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