このたび『100点満点とれる子の育て方』を発刊した、ステージメソッド塾代表の西角けい子氏に、子どもの成績を伸ばす秘訣を聞いた。
西角氏は、倍率10倍超の難関公立中高一貫校に7年連続地域No.1の合格実績をあげている。塾生のなかには、片道3時間かけて通う子もいるとか。「すべての子には、必ず伸びしろがある」という信念を軸に、学力とメンタルの両面からアプローチを重ねていくのが特徴だ。子ども本人だけでなく親や周囲も驚く「100点満点勉強法」7つのルールを含め、今回、全5回連載を企画した。
【第4回】は、「子どもをほめることの弊害」について語ってもらった。

なぜ、「ほめる」効果が短期間しか続かないのか?

「ほめて育てましょう」ということが、教育の世界はもちろん、いまやビジネスの世界でも定説になっています。
 でも、本当でしょうか?
 私は自分自身の経験から、ずっと気になっていました。

 私自身、前著『すべての成績は、国語力で9割決まる!』でも触れたように、わが子を中学受験で失敗させたことをきっかけに、ずいぶん言葉遣いには意識を向けてきました。

「叱ってはいけない。ほめなくてはダメだ」という強迫観念に縛られていた時期もあります。

 子どもたちへの指導をしたり、親御さんの相談を受けたりするときにも、言葉の響きや影響を考えてきましたが、これまでの指導経験を振り返ると、子どもの成績を伸ばせたのは、「ほめる」という言葉がけではなかったように思います。

「ほめる」とは、
「1.祝う2.物事を評価し、よしとしてその気持ちを表す、たたえる、賞讃する」(『広辞苑第六版』)とあります。

 塾の現場でも、子どもたちの努力や成果に「すごい!」「さすが!」などと、かつては言ったことがあります。
 ただ「ほめる」ことで、瞬間的にその場の士気は上がるのですが、効果は長続きしないのです。

 また、「ほめる」ことへの弊害もあります。
 実際に子どもたちは、「ほめる」ことが前提になると、自分の成果を認めてもらうことばかりに気がいってしまい、自分をより高めようとする努力をしなくなります。
 思うように先生からほめられないと、「自分がこんなにがんばっているのに!」と言い出し、「自分を認めないのは相手が悪いからだ」と訴え始める子もいます。
 これでは、せっかくよいと思ってやっていることが、逆に可能性をつみとってしまうことになります。

 もちろん、「叱る」こととのバランスも大事なのですが、私は、「ほめる」より「ねぎらう」ことの効果を実感しています。

 ねぎらうとは、「ほねおりを慰める、労を謝する」(『広辞苑第六版』)とあります。
 使い方は「労をねぎらう」などのように使い、相手の努力に対して、感謝の気持ちを表すのです。

 次に紹介するのは、私が塾生のSくんのお母さんにかけた「ねぎらいの言葉」が広がり、浸透していったエピソードです。