ダイヤモンド社のビジネス情報サイト
加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

我が道を行く習近平の「中国夢」の真意とは
公正が求められる中国社会にどう影響するか

加藤嘉一
【第8回】 2013年7月16日
著者・コラム紹介バックナンバー
1
nextpage

前回コラムでは、前任者の胡錦濤氏からたすきを受け取った習近平氏は、共産党が自らの正当性を担保するためにマネジメントを迫られる4つの軸「安定」・「成長」・「公正」・「人権」のうち三番目の「公正」を重視すべきであると指摘した。

 その理由として、(1)中国社会がこれから“ポスト安定&成長時代”に突入するから、(2)共産党指導部がかつてないほど「民生」、即ち「国民の生活」に直接関わるファクターを重視するようになってきたから、(3)「人権」が後回しにされる可能性が高く、よって「公正」の充実と行使がますます重要になるから、という3つを取り挙げた。

 その上で、習近平氏はこれからの10年間、中国という巨大な国家を主宰するために、「社会」・「公正」・「民生」に軸足を置いた重要思想&指導原理を高らかに主張すべきではないか(例えば「社会体制改革」)と結論づけた。

 ところが蓋を開けてみると、習近平総書記の口から出てきたスローガンは「中国夢」(チャイニーズドリーム)という産物であった。「中国夢」は習近平・李克強政権がこれからの10年間で最重要視すべき「公正」というファクターを促進するのか、或いは阻害してしまうのか。

歴代指導思想とは別物の「中国夢」
“党章用”の新たな提唱もあるか

 まず断っておきたいのは、少なくとも現段階においては、習近平氏の「中国夢」は前任者の胡錦濤氏が提唱した「科学的発展観」と同等の産物ではない。即ち、並列に扱えないということである。

 「科学的発展観」は後に、「毛沢東思想」、「トウ小平理論」、及び江沢民氏の「3つの代表」思想と同様に、2007 年10月北京で開催された第17党大会で「党章」に記載された中国共産党の指導思想である。習近平氏もこれから10年間中国の為政者として指揮を執っていく過程で、「党章」に規定されるような新たな指導思想を提唱する可能性は十分にある。

 むしろ、私から見れば、「中国夢」は、その抽象性や理想性からしても、胡錦濤時代に謳われた「和諧社会」(Harmonious Society)に近いスローガンである。

1
nextpage
関連記事
スペシャル・インフォメーションPR
クチコミ・コメント

DOL PREMIUM

PR
【デジタル変革の現場】

企業のデジタル変革
最先端レポート

先進企業が取り組むデジタル・トランスフォーメーションと、それを支えるITとは。

経営戦略最新記事» トップページを見る

最新ビジネスニュース

Reuters

注目のトピックスPR

話題の記事

加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

⇒バックナンバー一覧