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世界の市場関係者が固唾をのんで待った米国の雇用統計は、予想以上に良好な結果となった。
7月5日に発表された6月の非農業部門新規雇用者数は、前月比19万5000人増と市場予想を3万人上回った。失業率は7.6%で前月と変わらずだが、この調子で雇用増が続けば、今後順調に低下していくとみられている。
これを受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)は9月には量的緩和の縮小を開始する、との見方が濃厚になった。同日の長期金利は2.5%から2.7%まで跳ね上がったが、一方で米国景気への楽観が広まり、ダウ平均株価は上昇した。
今回の雇用増は、特に小売業とレジャー関連で顕著だった。背景には、良好な消費者のマインドがある。それを支えているのが、住宅価格と株価の上昇である。「雇用が伸びることで住宅の需要が伸び、担保価値増大で家計が改善して消費が伸びる、という好循環が起きている」(小野亮・みずほ総合研究所主席研究員)。金融危機の発端となり、その後の米国経済の重しであった住宅市場と家計の改善の意味は大きい。
多分にリスク含みの景気
だが、米国経済は決して盤石の状況ではない。
企業の業況、特に製造業は芳しくない。6月の製造業ISM景気指数は50.9で、好不況の分岐点となる50を何とか上回る水準だ。フルスロットルの金融緩和を続けているにもかかわらず、銀行貸し出しも伸びていない。さらに懸念されるのは、物価に下落圧力がかかっていることだ。指標とされるPCEコアインフレ率は、4月以降1.1%に張りついている。
総じて見れば、米国の景気は“改善を続けているものの、勢いは弱い”ということだ。