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職あれば食あり

経済成長するほど右肩下がり!?
シュリンク業界「銭湯」を救う若き経営者の秘策

まがぬまみえ
【第45回】 2013年7月18日
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 今どき、どうして銭湯を継いだのか。東京都台東区元浅草にある「日の出湯」の経営者、田村祐一さん(32歳)はきっぱりとこう言う。

 「とにかく、電車に乗って仕事に行きたくなかったんです」

 いわく、「子どもの頃から混んでいるところが大嫌い」。満員電車に揺られたくないものだから、高校も大学も自転車やバイクで通える範囲の進学先しか頭になかった。

 話すと「冗談でしょう」と言われるらしいが、ご本人はいたって本気である。

戦後の物価統制令が今も生きる
古めかしい銭湯経営の世界

 田村さんの混雑嫌いは筋金入りだ。それに、年季も入っている。それは、こんな幼い日のエピソードからも読み取れる。

 「ある日、母親に連れられて幼稚園の見学に行ったんですよ」

 「それで?」

 「園長先生と話をしている間、園庭で遊んでらっしゃいって言われて、僕、こう言ったらしいんです。混んでいるから嫌だって」

日の出湯の営業時間は15時から24時まで。フロントに立つ田村さんはいつも午前11時頃に起きて、妻と一緒に朝食兼昼食を食べる。仕事をしながら食べられるので好都合な「おむすび」

 銭湯と聞けば、唐破風(からはふ)に象徴される歴史ある佇まいの木造建築を思い浮かべる方も多いだろう。しかし、日の出湯はごく普通の小さなマンションの1階にある。知らなければ、おそらくは素通りしてしまうくらいのさりげない外観だ。

 「たぶん、性格的に商売とか向いていないんでしょうね。ほかから客を奪ってやるとか、ガリガリやって儲けてやる、とか、あまり思わないですから」

 銭湯だって立派な商売ではないのか、と思ったが、調べてみると、これがけっこう微妙だ。

 なにせ、その主たる収入源である入浴料金は物価統制令のため、都道府県ごと一律に定められている。東京都の場合は、大人1人あたり450円。つまり、どう頑張ってサービスしても、客からもらえる入浴料は同じ、だ。

 では、銭湯だけがなぜ、そんな古めかしい統制を受けているのかといえば、「公衆浴場の確保のための特別措置に関する法律」により、公衆浴場(銭湯)は「住民の日常生活において欠くことのできない施設」と位置づけられているから。にもかかわらず、特別措置を講じなければ著しく減少、もしくは消滅の恐れさえあるため、国や地方公共団体がしっかり管理してサポートしなければならない、という大義名分による(ただし、スーパー銭湯などは物価統制令の制限を受けない「その他の公衆浴場」に分類されるため、ここでは除外して考えていただきたい)。

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