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絶滅危惧種なお仕事ガイド

「経営者が60歳以上」約7割の氷屋に異変!?
一度働いたらハマってしまう若者急増の“意外な魅力”

曲沼美恵 [ライター]
【第4回】 2010年8月19日
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 「いいよねえ。ほんと、いいんだなあ」

 坂本龍一、浅野忠信、小栗旬、小雪の面々がグラス片手に登場する、サントリーウイスキーのCM。それを思い出し、飯倉商会4代目で社長の町田和之さん(47)がやたら「いい」を連発する。

 なにが、そんなに「いい」のだろうか。

 「透明感と存在感。そして、グラスの中の居ずまい。ぼくらから見ると、あれはウイスキーのCMなのか氷のCMなのかわからないくらい、すばらしい氷です」

 飯倉商会は、東京タワーを臨む東京都港区で、昭和2年から営業を続ける氷屋さんである。氷商、あるいは氷雪販売業ともいう。

 氷屋さんは氷を作らない。メーカーから仕入れた氷を使いやすい大きさに加工し、バーや飲食店などに販売する。削るだけなら、どこの商品も大差ないのではと思うが、それがそうでもないらしい。

 「同じ氷でも、扱い方や加工のしかたで品質は変わってしまいます」

 メーカーの氷はいわば、ダイヤモンドの原石だ。そして、その究極のブランドが純氷(じゅんぴょう)だという。水道水を濾過し、空気で攪拌させながら不純物を取り除きつつ、48時間以上かけてゆっくりと凍らせる。すると、純度が高く、透明で、結晶の大きな、溶けにくい氷ができあがる。

 「味も、やっぱり違うんでしょうか?」

 町田さんは「いいえ」と否定し、こう続けた。

 「純氷は無味無臭。酒本来の味を邪魔しないからいいんです」

運送業、IT関連…前職は皆バラバラ
一心に「グラスの氷」を追いかける若者たち

 午前4時。まだ薄暗いうちから町田さんのシゴトは始まる。従業員は早いほうで午前6時、遅いほうでも午前8時には出勤してくる。ときにはそこから、午後9時ごろまで残業が続くこともある。

 書き入れ時は6月から9月まで。その間、従業員は休ませても、自分は休まない。町田さんの両親も、祖父も、曾祖父も、そうやっていくつもの夏を過ごしてきた。

 従業員は、社員6人にアルバイト1人の計7人。みな男性で、多くは20代から30代だ。新卒が応募してくることはまずなく、たいていは、なにがしかの前職を持っている。

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曲沼美恵[ライター]

1970年生まれ。大学卒業後、日本経済新聞社に入社。2002年からフリーに。近年はビジネス誌やウェブサイトで、ルポルタージュやインタビュー、コラム等を執筆。近著に『メディア・モンスター:誰が黒川紀章を殺したのか?』(草思社)がある。仕事に関する情報はブログでも紹介中。「ニュース」より「人」に興味あり。

 


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「もう食えないかも」「このままだと絶滅」と言われる産業に従事する人々のなかにも、実は意外にしぶとく生きている人たちがいる。日本一でもなく、世界一でもない、「最後の下駄屋になること」を目指して働く職業や人々を追いかけ、「崖っぷちの中に見える希望」を探る。

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