社団法人日本フードサービス協会会長/グリーンハウス社長 田沼千秋
撮影:加藤昌人

 農林水産省の調査では、2006年度の年間食品廃棄物量(家庭ゴミを除く)は1135万トンを超え、この5年、横ばいで推移している。外食業界はそのうち27%を占めている。

 別の調査では、家庭ゴミも含めた食品廃棄物を金額ベースで推計すると約11兆円に上るといわれ、日本の農林水産業全体の生産額と肩を並べる。

 先日、このことを知ったある外国政府の高官は、「日本はとんでもない国だ」と呆れていた。食料自給率の低さなど、食にまつわる問題が大きく取り上げられているが、食品廃棄物についてはあまり注目されない。業界各社はこの数字を把握し、食に関するもう1つの問題としてもっと知るべきだ。

 当社では、食べ物の大切さをわかってもらえるように子どもたちと一緒に農地へ行き、自分たちの手で野菜を育て、料理して食べるという活動をしている。子どもたちは、初めのうちは怪訝な顔をしているが、材料から自分で作った料理は最後まで大事に、嬉々として食べている。

 子どもたちには、普段の食事は農家の方がたが一生懸命作った食材で支えられていることを教えなければならない。これは当たり前のことだが、今こそしっかり伝えなければ食の問題は解決しないだろう。

 本来、食べ物の大切さを教えるのは親の役目。しかし、その責務を果たす親は少なくなっている。ならば外食業界が担っていくことも考えなければならない。おいしいものを提供するだけでなく、外食業界は“食の世直し運動”ができる業界だと思っている。