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〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?

「ゴミ」を資源に産業革命?
問題解決型〈ものづくり〉に必要な
「素材」の見つけかた

デザイン、リサイクル、ファブラボという3つの切り口で読み解く

瀬戸義章 [作家/ジャーナリスト/tranSMS代表]
【第4回】 2013年7月31日
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よいものを素材に使ってつくった「もの」は、果たして誰にでも受け入れられるものとなるのだろうか? せっかくニーズを踏まえたとしても、たとえば高価だったり、オーバースペックだったりと、現地で受け入れられていない「もの」も多い。
一方で、いま途上国では「ゴミ」を「素材」「資源」にした、まさに産業革命とも言える事態が起こっている。そこで目にするのは、アイデア次第でゴミだって立派な資源になることであり、そこから生まれるものづくりが、現地の社会問題を解決しているその姿である。
今回は、〈デザイン〉〈リサイクル産業〉〈ファブラボ(Fablab)〉という3つの切り口から、「ゴミという資源・素材」を使った問題解決型ものづくり「ソーシャル・ファブリケーション」の実態を紹介しよう。

フィリピンのスラムに落ちているもの、それはゴミか、資源か?
世界のどこにでもあるものが「リソース」になるとき

 フィリピンの首都、マニラ北部のトンド地区には大規模な廃棄物の投棄場がある。広さは2万平方メートル以上。1日に300台のトラックがやってきて、マニラ市の各地からレジ袋や果物の皮、魚のはらわた、ニワトリの骨、携帯電話の箱などを運び、焼却せずにそのまま捨てている。

ゴミの投棄場にて。新しいゴミが運び込まれるたびに、歓声を上げて人が集まる
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 2010年11月、スラムの生活を知るためのスタディツアーに参加して、この投棄場を訪れた。事前に映像で見ていたものの、ハエとカラスと野犬がたかる不潔なゴミの大地は、空調の効いたホテルに引き返したくなる気持ちをもたらすのには充分すぎるほどの場所だった。そこに価値などいっさい「ない」ように見える。

 しかし、そんな気持ちよりも強く湧いてきたのは、投棄場にいる人々への興味だった。不毛に見えるその大地には、視界に入るだけでも数百人がいた。周辺にはスラムが広がり、2万人を超える人々が暮らしているという。彼らは、収集車が新たにゴミを投棄すると、歓声を上げて、我先にと先端の曲がった棒を使ってゴミ山を探りだす。これ以上ゴミが増えて、いったい何が嬉しいのだろうか。

 ゴミ拾いをしていた青年に尋ねれば、答えはシンプルだった。「お金になるから」である。彼らは鉄くずや空き缶、空き瓶、ペットボトル、プラスチック、ビニール袋などを探し、集め、屑屋に売却することで生計を立てているのだ。

彼らが歓声を上げるのは、そこに「資源」が「ある」と見ていたからだ。ここに何の価値も「ない」と思ったのは僕らスタディツアーの参加者だけだった。収集車によって「ゴミ」が増えただけでなく、新たに「資源」が到着したのである。

 世界のどこにでもゴミは大量に落ちているものだ。僕は、東南アジアの各国で実際にゴミを拾ったことがある。東南アジア最貧国である東ティモール、そのなかでもとりわけ貧しい地域にすら、プラスチックゴミや空き缶、ペットボトルが落ちており、30分ほどで45リットルの袋がいっぱいになった。

 これはもしかしたら、貧困という大きな問題を抱えているその場に、大きな資源が眠っている、ということなのかもしれない。今回は、この「ゴミという資源・素材」を使った問題解決型ものづくりを、〈デザイン〉〈リサイクル産業〉〈ファブラボ(Fablab)〉という3つの切り口から紹介したい。

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瀬戸義章(せと・よしあき) [作家/ジャーナリスト/tranSMS代表]

1983年、神奈川県川崎市出身。長崎大学環境科学部卒業。都内の物流会社でリユースビジネスの広報に携わった後、独立。東南アジアのリサイクル事情や、東日本大震災の復興の様子を取材して歩く。2012年、発展途上国向けのプロダクトデザイン&ビジネスコンテストである「See-D Contest2012」にて最優秀賞をチーム「tranSMS」の仲間と共に受賞し、2013年から東ティモールへの導入・実施を始めている。著作に『「ゴミ」を知れば経済がわかる』(PHP研究所)がある。


〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?

日本産業には欠かせない、〈ものづくり〉という言葉。だが、いつからかこの言葉は力を失ってはいないだろうか? 大量に消費されることを前提とした〈ものづくり〉に、使い手である消費者だけではなく、作り手である生産者も、疲弊してはいないだろうか。

そこで本連載では、いま日本を含む世界で密かに新しい〈ものづくり〉の潮流である、問題解決型ものづくりともいうべき「ソーシャル・ファブリケーション」の世界を様々な側面から紹介したい。

「ものづくりを通じて、社会課題を自分ごと、自分たちのこととして解決する」という可能性を知るとき、大量生産・大量消費のなかで分断された作り手と使い手は再びつながり、国境を超えたビジネスが立ち上がる。

「〈ものづくり〉は、まだ僕らを豊かにできるのか?」

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