台湾の電子機器受託生産最大手、鴻海グループが日本に独自の研究所を新設した(『週刊ダイヤモンド』特別レポート「【鴻海精密工業】シャープを見切った“皇帝”の素顔 8時間超の株主総会に完全密着」を参照のこと)。シャープやパナソニックなど経営不振の家電メーカーが抱えきれなくなった技術者たちを、最大で40人採用し、スマートフォンなどに使われる先端ディスプレイの開発を進めるという。

 鴻海のシャープ本体への出資契約は二転三転した末、1年間の交渉期限が切れた。しかし、鴻海は、シャープとの提携に頼ることなく、独自に日本の技術を集めようとしている。郭台銘会長は、「日本にはリタイアした優秀な人材がいる。また日本の組織になじめない新卒の学生にも、チャンスを作りたい」「シャープをすでに辞めた人にも、戻ってくるよう呼びかける。また液晶メーカーには、パナソニックや、その他の研究機関もある。日本固有のルールで、ゆっくりとキャリアの階段を昇っていくのは嫌だという人に、私たちは開発環境を用意したい」と発言している。

 これは、この連載が主張してきた成長戦略「外国製造業の研究開発拠点の日本誘致」に合致する動きである(第57回を参照のこと)。これを契機に、日本への外資参入の動きが広がるようになれば、日本経済に新たな成長の希望が生まれてくるかもしれない。

参院選総括:野党惨敗を考える

 さて、本題である。前回に引き続き、参院選を総括する。今回は、参院選で惨敗に終わった野党を評価してみたい。

 昨年12月の衆院選後、この連載で野党について論じたのは、たった一度だけである(第53回を参照のこと)。アベノミクスの狂騒の中で、野党はすっかり影が薄くなり、書きようがなくなっていたからだ。だがその時、民主党など野党に対して、以下の2つのことを訴えた。

(1)安倍晋三政権は「自助」を強調し、医療や介護、年金などの課題を話し合う「社会保障国民会議」の推進にも消極的である。民主党が国民の生活不安を重視する「共助」の方向性を打ち出せば、生活の不安を感じる国民に対して、次第に一定の支持が集まっていく可能性はある(第53回P.5を参照のこと)。