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出口治明の提言:日本の優先順位

「負担が即ち給付」「後世へのツケ回し回避」
社会保障制度改革国民会議の報告書を読んでみよう

出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]
【第92回】 2013年8月13日
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 8月6日、社会保障制度改革国民会議(以下、国民会議)は、「確かな社会保障を将来世代に伝えるための道筋」という副題を付した報告書(以下、報告書)をまとめて公表した。決して分厚いものではないので、読者の皆さんも、ぜひ自分の目で一読してほしい。

 ところで、報告書は、一体何を提言しているのだろうか。報告書は、大きく4つのパートに分かれている。「社会保障制度改革の全体像」「少子化対策分野の改革」「医療・介護分野の改革」「年金分野の改革」である。では、パート毎にその内容を見て行こう。

1970年代モデルから
2025年モデルへ

 「社会保障制度改革の全体像」は、次のように述べる。わが国の社会保障の枠組みが固まった1973年のモデルは、「正規雇用・終身雇用の男性労働者の夫と専業主婦の妻と子ども」という核家族を前提に「現役世代は雇用、高齢者世代は社会保障」という生活保障モデルであった。そして、この時代は約9人の現役世代が1人の高齢者を支えていたのである。この70年代モデルが既に破綻して久しいことは、誰の目にも明らかである。現在のわが国では、カップルと子ども2人という「標準世帯」は全世帯の3割を切っており、かつ、現役世代約3人が1人の高齢者を(しかも平均余命の延伸により、70年代の約3倍という長期間にわたって)支えなければならなくなっているからだ。

 そうであれば、「給付は高齢者世代中心、負担は現役世代中心」という従来の発想を転換して、「給付も負担も全世代で」という報告書の指摘は全くもって当然という他はない。そして全世代型に切り替えるのであれば、負担については「年齢別」から「負担能力別」に切り替えることもまた、論理必然的に当然の帰結ということになる。これには、誰しも異論を唱える訳にはいくまい。

 また、国民会議は、消費増税という国民負担を社会保障制度改革の実施という形で速やかに還元するため、短期に改革・実施すべき事項と、団塊世代がすべて75才以上となる2025年を念頭に置いて段階的に実施すべき中期期の事項を分けて考えるべきだと指摘している。妥当な考え方であろう。なお、報告書は、改革をフォローアップするための体制確保を政府に求めているが、それならいっそのこと、国民会議をこのまま存置して、毎年度末にフォローアップ報告書を内閣に提示するように仕組み化してはどうか。

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出口治明 [ライフネット生命保険(株)代表取締役会長]

1948年、三重県美杉村生まれ。上野高校、京都大学法学部を卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。企画部や財務企画部にて経営企画を担当。生命保険協会の初代財務企画専門委員会委員長として、金融制度改革・保険業法の改正に従事。ロンドン現地法人社長、国際業務部長などを経て同社を退職。その後、東京大学総長室アドバイザー、早稲田大学大学院講師などを務める。2006年にネットライフ企画株式会社設立、代表取締役就任。2008年に生命保険業免許取得に伴い、ライフネット生命保険株式会社に社名を変更、同社代表取締役社長に就任。2013年6月24日より現職。主な著書に『百年たっても後悔しない仕事のやり方』『生命保険はだれのものか』『直球勝負の会社』(以上、ダイヤモンド社)、『生命保険入門 新版』(岩波書店)、『「思考軸」をつくれ』(英治出版)、『ライフネット生命社長の常識破りの思考法』(日本能率協会マネジメントセンター)がある。

ライフネット生命HP

 


出口治明の提言:日本の優先順位

東日本大地震による被害は未曾有のものであり、日本はいま戦後最大の試練を迎えている。被災した人の生活、原発事故への対応、電力不足への対応……。これら社会全体としてやるべき課題は山積だ。この状況下で、いま何を優先すべきか。ライフネット生命の会長兼CEOであり、卓越した国際的視野と歴史観をもつ出口治明氏が、いま日本が抱える問題の本質とその解決策を語る。

「出口治明の提言:日本の優先順位」

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