1センチメートル四方ほどの小さな“石”が任天堂を転ばせるかもしれない──。
経営再建中の半導体大手、ルネサスエレクトロニクスが鶴岡工場(山形県)の閉鎖を決めたことで、任天堂が頭を抱えている。任天堂の最新ゲーム機「Wii U」の事業計画が覆されかねないためだ。
鶴岡工場はルネサスのシステムLSIの主力製造拠点で、旧NEC系。ルネサスは台湾の半導体製造大手TSMCと売却交渉を進めたがまとまらず、2~3年以内に閉鎖することを決めた。
なぜ、鶴岡工場の閉鎖が任天堂の痛手になるのか。それはWii Uの“命の石”ともいえる半導体を製造しているからだ。
Photo:iFixit
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鶴岡工場にとって、任天堂は前世代機の「Wii」から半導体製造を担っていた得意先。ピーク時には製造量の半分以上が任天堂向けを占めていた。だが、Wii Uは4~6月期に今年度の販売目標900万台の2%以下の16万台しか売れない極度の不振。鶴岡工場の稼働率も今年に入り低空飛行を続け、赤字を垂れ流していた。
鶴岡工場が“任天堂依存”だったとはいえ、任天堂が今後、別会社に半導体の製造を頼めばよいと思うかもしれない。だが、そう簡単にはいかない事情があるのだ。
“秘伝のタレ”が障壁に
鶴岡工場の最大の特徴は「混載DRAM」と呼ばれる特殊な半導体を製造できること。計算用のロジック回路と記憶用のメモリ回路という、タイプの異なる2種類の回路を、一つの半導体上に作り込むことが可能なのだ。通常は二つの半導体が必要となる処理を一つの半導体上で実現でき、計算速度の向上や省電力につながる。