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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

パワハラと長時間労働の魔窟で死を選んだ社員たち
遺族に寄り添う弁護士が説く「心を壊す職場」の罠

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第8回】 2013年8月27日
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 職場で悶える会社員らの話は、連載第2回第3回第5回で取り上げた。今回は、そのような社員たちから相談を受ける弁護士を紹介したい。自死遺族支援弁護団の和泉貴士(八王子合同法律事務所)さんである。

 和泉さんは、自らの母親を自死(自殺)で亡くしたこともあり、自死を始め過労死、パワハラ、いじめなどの解決に向けて積極的に取り組んでいる。

 これまでも指摘したように、ブラック企業の職場には社員を精神的に悶えさせる構造がある。社員が過大な業務や成果を要求され、競争が激化している職場環境を、「グローバル化の時代だから仕方ない」などという理屈で覆い隠すことには無理がある。その構造的な問題の真相に迫りたい。

 取材の模様をより正確に伝えるため、今回も筆者と和泉弁護士とのインタビュー形式でお伝えする。


会社員はなぜ自ら死を選ぶのか――。
自死遺族に寄り添う人権派弁護士の証言

弁護士の和泉貴士さん。八王子合同法律事務所にて

筆者 日本の職場では、上司などとの距離の取り方が上手く、要領のいい社員が浮かばれ、コミュニケーションなどが不器用な社員は潰れていく傾向があるように思います。中には精神疾患になり、死を選ぶ会社員もいると聞きます。

和泉 「正直者がバカを見る」という構図は、確かにあるように思う。私がここ数年の間に受けた相談について言えば、月の残業時間が160~200時間になっていた社員(正社員)が数人いた。

 彼らの多くは、メーカーやIT系企業で働いていた。20代もいれば、50代もいた。いずれも遺族からの相談だった。本人たちは超長時間労働などの影響で精神疾患になり、死を選んでいた。

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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