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悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

「ひどい女、この足で踏みつけてやりたい……」
女上司の拷問研修で職場を追われた模範社員の無念

吉田典史 [ジャーナリスト]
【第5回】 2013年8月6日
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 今回は、20年以上同じ職場で働いてきたにもかかわらず、最後は理不尽な理由で事実上の解雇に追い込まれたベテラン女性社員を紹介しよう。65歳の定年を目前にしていたが、上司である女性課長やその背後にいる役員らは、この女性社員に「いじめの研修」を受けさせ、辞めるように仕向けた。

 解雇と言えば、それ相応の根拠が必要である。だが、会社からは今も明確な説明がない。女性は精神的に落ち込んだ。「うつ病になるかもしれない」と警戒しながらも、会社に説明を求め続ける。その思いに迫ると、ブラック企業の人事システムに深く根付いた歪んだ雇用観が見え隠れする。ここにも、多くの会社員が病んでいく一因が巣食っている。


「上司とは言えないひどい女
この足で踏みつけてやりたい……」

 「あの女(50代半ばの上司/課長)を土下座させ、謝らせてやりたい。足でぎゅっ、ぎゅっと踏みつけてやりたい」

 高田陽子さん(仮名・63歳)は今、職がない。労働組合・下町ユニオンの組合員となり、会社に雇い止め(事実上の解雇)を撤回することを求めている。半年の有期契約社員であり、実に軽く扱われた末の解雇だった。いじめに近い「研修」を命じた女性上司や、それを黙認した管理部門の責任者らに強い怒りを持つ。

 「すごく苦しいの。夜、寝ていると涙が出てくる。悔しいの……。だから、泣いている場合じゃないと言い聞かせる。このままでは、自分に負けちゃうから」

 今年3月末まで、都内北東部に本社を構える化粧品や健康食品を販売する会社で、半年ごとの契約社員(パート社員)としてテレフォン・オペレーターの仕事をしていた。月の給与は、平均で20万円ほど(額面)。賞与はない。退職金ももらえなかった。

 このオペレーターには、インバウンド(受信業務)とアウトバウンド(発信業務)の2種類がある。高田さんは、一貫して後者だった。長年、電話でお客さんと話をしてきた。それだけに落ち着いた口調で、聞き取りやすく話をする。

 「ここ(ユニオンの事務所)に来て不満を話すと、みんなが聞いてくれる。1人だったら、うつ病になりかねない」(高田さん)

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吉田典史 [ジャーナリスト]

1967年、岐阜県大垣市生まれ。2006 年からフリー。主に人事・労務分野で取材・執筆・編集を続ける。著書に『あの日、負け組社員になった・・・』『震災死 生き証人たちの真実の告白』(共にダイヤモンド社)や、『封印された震災死』(世界文化社)など。ウェブサイトでは、ダイヤモンド社や日経BP社、プレジデント社、小学館などで執筆。


悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史

 企業で働くビジネスマンが喘いでいる。職場では競争原理が浸透し、リストラなどの「排除の論理」は一段と強くなる。そのプロセスでは、退職強要やいじめ、パワハラなどが横行する。最近のマスメディアの報道は、これら労働の現場を俯瞰で捉える傾向がある。

 たとえば、「解雇規制の緩和」がその一例と言える。事実関係で言えば、社員数が100以下の中小企業では、戦前から一貫して解雇やその前段階と言える退職強要などが乱発されているにもかかわらず、こうした課題がよく吟味されないまま、「今の日本には解雇規制の緩和が必要ではないか」という論調が一面で出ている。また、社員に低賃金での重労働を強いる「ブラック企業」の問題も、あたかも特定の企業で起きている問題であるかのように、型にはめられた批判がなされる。だが、バブル崩壊以降の不況や経営環境の激変の中で、そうした土壌は世の中のほとんどの企業に根付いていると言ってもいい。

 これまでのようにメディアが俯瞰でとらえる限り、労働現場の実態は見えない。会社は状況いかんでは事実上、社員を殺してしまうことさえある。また、そのことにほぼ全ての社員が頬かむりをし、見て見ぬふりをするのが現実だ。劣悪な労働現場には、社員を苦しめる「狂気」が存在するのだ。この連載では、理不尽な職場で心や肉体を破壊され、踏みにじられた人々の横顔を浮き彫りにし、彼らが再生していくプロセスにも言及する。転機を迎えた日本の職場が抱える問題点や、あるべき姿とは何か。読者諸氏には、一緒に考えてほしい。

「悶える職場~踏みにじられた人々の崩壊と再生 吉田典史」

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