「どに~ちょ」「イエーイ」「Know me(のーみー)」など、ユニークなネーミングの働き方を次々に投入、事業も順調な成長を遂げているのが、クラウド名刺管理サービス「Sansan」「Eight」を手がけているSansanです。設立は2007年。代表取締役社長の寺田親弘氏にお話を伺いました。(写真・小原孝博)

仕事は、もっと楽しく
やって良かったのだ

営業職でも、サテライトオフィス勤務可!<br />の会社があった<br />【企業インタビュー:Sansan編】代表取締役社長の寺田親弘氏(左)と筆者

本田 かつては、大手商社に勤務していたそうですね。

寺田 汗水垂らして辛いことを歯を食いしばってやっていないと仕事ではない、みたいな空気が日本にはある気がします。ところが、2001年にアメリカのシリコンバレーで見た光景に、私は衝撃を受けたんです。遊んでいるみたいに働いていて。正直ずるいな、と思いました。なんだ、仕事は、もっと楽しくやって良かったのか、と。

本田 仕事というのは苦しそうにしているものだ、という感覚は昔の力仕事の時代から来ているのかもしれません。今も、楽しそうに仕事をすることを、否定的に見る会社もあるのではないでしょうか。

寺田 しかし、すでにそうではない会社も増えていると思います。楽しそうに仕事をすることを、会社も、もちろん社員も支持している。なぜなら、それで成果が上がるから。もっといえば、そのほうが成果が上がるからです。考えてみれば当然かもしれません。楽しいからこそ、夢中になれるし、続けられる。楽しくなければ、続かない。楽しめていることが、とても大事になっているのです。

本田 では、どうしたら仕事が楽しめるようになるんでしょうか。

寺田 前例がないことに取り組んでいる、ということかもしれません。前例がないから、自分たちで作っていくしかない。誰かの真似をしてもしょうがない。だから、働いている社員も、あたらしいものを作っていく面白みを間違いなく実感している。そして、会社もこんな大胆な発想になれるのです。

本田 ユニークなネーミングの働き方を推奨しているとか。

寺田 在宅勤務制度「イエーイ」を取り入れて推進しています。また、平日と土日を振り替えて勤務できる「どに~ちょ」という制度もあります。どちらもネーミングが変わっていますので、思いつきでやったような制度に思われるかもしれませんが、まずは課題があって、それに対する解として、制度を作り出しているんです。どに~ちょの場合は、土日のほうがオフィスは静かなので、集中できるという声が多かった。申告してもらえれば、平日の水曜日を休む代わりに土曜日に出る、といったことが可能です。イエーイは、現在は月4日の在宅勤務を可能にしています。

本田 ノリや受け狙いで、ネーミングしたわけではないんですね(笑)。

寺田 ネーミングって、本当に大事だと戦略的に考えています。あたらしい課題に対して制度が思い浮かんだとき、名前がついてこないとうまくいかないんじゃないか、と気になるくらい名前は重要だと思っています。つまらない制度名だったら、誰も覚えないし、使わないと思うんですよ。

本田 すごく考えられた中で作られていたんですね。しかも、制度の意義を持って使ってほしい、という思いがあるから名前にもこだわる。結果的に話題づくりにもなるわけですが、それだけのためにやっているわけではもちろんない、と。

寺田 当社は、サテライトオフィスを徳島県に展開して、さまざまなあたらしい働き方に挑戦しています。エンジニアが多い会社ですから、勤務時間に関してもゆるやかな制度を作っているように思われがちですが、そんなことはありません。9時半が出社時間で、遅刻は厳禁です。5分の遅刻もダメです。エンジニアはフレックスが好きですが、当社はフレックス否定派なんです。なんとなく緩んでしまうんじゃないか、という不安がある。もっとも、来月変わっているかもしれませんが(笑)。