消費税率を8%に引き上げて、景気が腰折れするかどうかに注目が集まっている。多くの人の脳裏から、1997年4月の消費税率の引き上げで景気が腰折れしたトラウマを消せないのだから、悩ましいのは仕方がない。しかし、経済政策には実験ができない以上、最後は政治が腹をくくるしかない。

 できることは、増税と他の恩恵のプラスとマイナスを比較考量することである。そこで筆者は、税負担増に対してそれを穴埋めできるような購買力の増加が、消費者にもたらされているかを確認してみることにした。

 2014年4月に予想される負担増の金額は年間8.1兆円。ここに高齢者向けの特例水準の解消(▲1.0兆円)と厚生年金・国民年金の保険料引き上げ(▲0.8兆円)を加えると、年間負担増は合計▲9.9兆円に及ぶ。

家計金融資産は58兆円の時価増価

 それに対して、家計の購買力の変化はどうか。考えられる変化は、(1)勤労所得増、(2)利子・配当などの金融所得増、そして(3)株式などの金融資産のキャピタル・ゲイン(値上がり益・円安による時価増加)の3つである。

 データを確認すると、(1)2012年7月~2013年6月の雇用者報酬額は、ほぼ横ばい(前年比0.1%増)。利子・配当額は規模が12兆円弱。2012年度の銀行決算資料では、預金利息は前年度▲13.8%の減少になっている。

 2011年度の家計所得(フロー部分)は305兆円と、1997年度370兆円よりも2割方減少しており、▲9.9兆円の負担増(所得比▲3.2%増、1997年のときは▲2.3%増)はきついように思える。