ベーシックインカムが
わからない人の盲点

 今回は、経済の問題を考えるにあたって、見落とされがちだが、重要な発想法についてお伝えしたい。それは、「合計で考える」視点の転換だ。

 先般、本欄に「小泉進次郞氏に知ってほしい『ベーシックインカム』」というタイトルで、ベーシックインカムについて書いた。ベーシックインカムには賛否両論があるが、これに反対する人にしばしば見られる考え方は、ベーシックインカムの給付の部分だけを見て、必要性や公平性を論じることだ。

 たとえば、「高額所得者にも一律に現金を配るのは無駄で、不公平でしょう」という類いの論法だ。民主党政権時代に「子ども手当」が議論された際にも、受給の条件として親の所得に制限をつけるべきだという意見があった。

 しかし、ベーシックインカムでも、子ども手当でも、高額所得者に給付が渡ることが問題なら、彼らに対する課税を適切にすればいい。一律にお金を渡しておいて、実質的な再分配の公平性は税制で調節する方がシンプルだ。

 受給に所得制限を設け、制度を複雑にし、手続きを面倒にして、官僚の仕事や裁量を増やすことは、行政の効率を損ない、国民にとってのコスト増につながる。

 また、ベーシックインカムの場合、給付と税負担後の可処分所得の「合計」を見ると、これがいわゆる「負の所得税」(「給付付き税額控除」という冴えない別名もある)と同じ効果であることがわかる。

 効果が同じなのだから、優劣に大差はないが、所得補足が完璧でなくても、また税源を消費税に絞ったとしても、簡素な手続きで再分配の効果を得られるベーシックインカムの方が優れているといえるだろう。