「日数制限のない有給休暇」「目標は作らない」「研修期間中にこの会社とは合わないと思ったら、4000ドルをもらって辞められる」――これだけを聞くと、それでメンバーをマネジメントできるのか、と疑問に思いますが、これがエバーノート社やザッポス社といった最先端の企業がやっているとしたら?
起業の苦難や楽しさを「仲間づくり」の視点から赤裸々に描いた『ともに戦える「仲間」のつくり方』の著者、南壮一郎氏が様々なゲストを迎えて、「何をやるか」ではなく「誰とやるか」の大切さについて語り合う好評企画。第6弾の今回は、6月に『あたらしい働き方』を上梓した本田直之氏との対談の前編をお届けします。本田氏が取材して見つけたおどろきのワークスタイルとは?さらに、年間2000人と面接する南氏との対談で見えてきた、仲間集めのキモ、そして主体的に行動する仲間がいる会社の共通点とは?(構成:朝倉真弓)
ほしいのは、「放置プレー」で結果が出せる仲間
――なぜ、日数制限のない有給休暇制度が「アリ」なのか?
シティバンクなどの外資系企業を経て、バックスグループの経営に参画し、常務取締役としてJASDAQへの上場に導く。現在は、日米のベンチャー企業への投資事業を行うと同時に、少ない労力で多くの成果をあげるためのレバレッジマネジメントのアドバイスを行う。東京、ハワイに拠点を構え、年の半分をハワイで生活するデュアルライフを送っている。幸福度ランキングトップの北欧(デンマーク、スウェーデン、フィンランド)の人たちと幸福について語り合って著した近著『LESS IS MORE 自由に生きるために、幸せについて考えてみた。』(ダイヤモンド社)が話題になっている。
このほかの著書に、ベストセラーになったレバレッジシリーズをはじめ、『ノマドライフ』(朝日新聞出版)、25万部を越えるベストセラーとなった『面倒くさがりやのあなたがうまくいく55の法則』『ゆるい生き方』『7つの制約にしばられない生き方』(以上、大和書房)『ハワイが教えてくれたこと。』(イースト・プレス)などがある。
著書は累計200万部を突破し、韓国、台湾、中国で翻訳版も発売されている。
南 『あたらしい働き方』という本を執筆されるにあたり、ユニークな日米の会社を取材されていましたが、仲間との付き合い方や関係性に関して何か面白いエピソードはありましたか?
本田 いい組織って、いい人以外受け入れないことを徹底しているんだよね。たとえば俺も、自分で何か組織を作るにあたってすごく大事にしているのは、“人の空気感”というもの。そういうのを考えて、人を受け入れるか受け入れないかを判断しないと、組織はすぐにおかしくなっちゃう。ひとたび違和感がある人が入ってくると、その組織自体もぎくしゃくしてくる。
今回いろんな会社を取材して感じたのは、どの組織も人の「質」をすごい重要視しているなっていうこと。上手くいっている会社は、質に関してものすごく徹底している。だから、“ナイスな会社”には“ナイスな人”が集まっているんだよね。その結果、社員を自由にさせることができる。
南 社員を信用信頼しているからこそ、「あたらしい働き方」が可能なんですね。
本田 たとえば、エバーノートには日数制限のない有給休暇制度があるんだけど、ナイスじゃないヤツがいたら、それを逆手に取って乱用するかもしれない。
一方で、そういう自由を活かせる人間はセルフマネジメントができていて、命令されなくても自ら仕事をつくることができる。逆に言えば、こういう自由な組織のなかでは、セルフマネジメントができる人しか生きていけない。誰かに「これをやっておけよ」と言われないとコミットできない人は向いていない。
昔は学歴が高い人がエリートだったんだけど、現代の自由な会社におけるエリートというのは、自分で物事を興せる人だったり、自分で動ける人だったり、何も教えられずにいきなり放置されても結果が出せる人なんだよね。
南 主体的にオーナーシップが取れる人ということですね。
本田 取材して思ったのは、会社員なんだけど、会社というプラットホームを利用した起業家集団みたいなもんだなと。その状況を楽しめる人間にとってみれば、「あたらしい働き方」は最高に面白いと思うんだよね。
南 今のお話を聞いて、楽天で働いていた28歳ごろに三木谷浩史さんに言われたことを思い出しました。
「今後活躍するヤツは、自分のなかにエンジンを積み、それに点火して走れるヤツだ。ほとんどの人がエンジンすら積んでいない。誰かに押してもらったり、引っ張ってもらったりしないといけない。一方で、エンジンを積んでいるのに起動できないヤツもいる。だから、とにかく自分で考えたことを自分で実行して、起動させる訓練をしなさい」
時代がそういう人を欲しているんですね、きっと。