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加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

習近平・王岐山による「反腐敗闘争」は
「中国民主化」を促すか?

加藤嘉一
【第13回】 2013年9月24日
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反腐敗闘争&法治主義の
プロパガンダに利用された“薄煕来事件”

前回コラムでは、「“薄煕来事件”のクライマックスは“中国民主化への道”を促すプロセスにつながらない。それどころか、不安要素は増殖し続ける」と結論づけた。

 「薄煕来事件」の本質は権力闘争、及びその背後にある路線闘争であり、薄氏が毛沢東主義(マオイズム)を掲げる(それもブラックな手法で)などして大衆ウケを狙ったポピュリズムは、中国政治が“左傾化”する危険性をはらんでいたため、中央の現役指導者や元老たちから毛嫌いされ、政界から追い出されるどころか、法的に起訴されてしまった。

 政治生命を奪われただけでなく、法治主義を掲げる宣伝材料にまで利用されるという、一時は総理まで狙っていた薄氏にとっては“屈辱的”と言えるクライマックスを迎えることになるのであった。

 中国政治はいつも不確実性と、そこから生まれるダイナミズムを内包している。

 「それでは、“薄煕来事件”によって左傾化に制圧が加わることの反動として、中国国内における“右傾化”が促進されるのかといえば、事はそんなにシンプルには運ばない。習近平国家主席就任後の言動をウォッチする限り、現段階では改革派、保守派、市場派、軍部、大衆などあらゆるプレイヤーに“いい顔”をして足元が若干おぼつかない様相を呈しているが、全体的には“左傾的”」(前回コラムより抜粋)だと私は分析している。

 本連載が分析対象とする「政治改革」や「民主化プロセス」は、程度や性質はどうであれ、“右傾的”(中国では“リベラル的”の意味)になると推測されるが(改革プロセスが国家リーダーによって着実に推進されると断定できる根拠や前兆はいまだ見いだせないが)、昨今における習近平氏の政治からは「薄煕来失脚(左傾化阻止)→政治改革の促進(右傾化推進)」とはならない複雑な国情を思い知った次第である。

前回コラムではほとんど言及しなかったが、中央指導者は、表向きには薄煕来元政治局委員(共産党トップ25)を権力闘争や路線闘争が複雑に絡んだ政治闘争の一環としてではなく、習近平政権が発足以来目玉商品として大々的に展開する「反腐敗闘争」の一環として処理し、且つ裁判を部分的に公開することで、反腐敗闘争が制度的に実施されていることを内外にアピールし、法治主義が成熟してきていることすらプロパガンダしようと企んだのだ。まさに、常に「ピンチはチャンス」、「一つのアクションで少なくとも一石三鳥」を狙う中国共産党らしい処理方法であった。

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加藤嘉一 

1984年生まれ。静岡県函南町出身。山梨学院大学附属高等学校卒業後、2003年、北京大学へ留学。同大学国際関係学院大学院修士課程修了。北京大学研究員、復旦大学新聞学院講座学者、慶應義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、2012年8月に渡米。ハーバード大学フェロー(2012~2014年)、ジョンズ・ホプキンス大学高等国際問題研究大学院客員研究員(2014〜2015年)を務めたのち、現在は北京を拠点に研究・発信を続ける。米『ニューヨーク・タイムズ』中国語版コラムニスト。日本語での単著に、『中国民主化研究』『われ日本海の橋とならん』(以上、ダイヤモンド社)、『たった独りの外交録』(晶文社)、『脱・中国論』(日経BP社)などがある。

 


加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ

21世紀最大の“謎”ともいえる中国の台頭。そして、そこに内包される民主化とは――。本連載では、私たちが陥りがちな中国の民主化に対して抱く“希望的観測”や“制度的優越感”を可能な限り排除し、「そもそも中国が民主化するとはどういうことなのか?」という根本的難題、或いは定義の部分に向き合うために、不可欠だと思われるパズルのピースを提示していく。また、中国・中国人が“いま”から“これから”へと自らを運営していくうえで向き合わざるを得ないであろうリスク、克服しなければならないであろう課題、乗り越えなければならないであろう歴史観などを検証していく。さらに、最近本格的に発足した習近平・李克強政権の行方や、中国共産党の在り方そのものにも光を当てていく。なお、本連載は中国が民主化することを前提に進められるものでもなければ、民主化へ向けたロードマップを具体的に提示するものではない。

「加藤嘉一「中国民主化研究」揺れる巨人は何処へ」

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