動き出す電力システム改革
【第3回】 2013年9月27日
著者・コラム紹介
瀧口信一郎[日本総合研究所創発戦略センター シニア・マネジャー]
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『電力システム改革の本質』【前編】
凝り固まった権限構造をどう分散・再構築するか
――瀧口信一郎・日本総合研究所創発戦略センター シニア・マネジャー

 以下で2つの方向性の実現のために何が必要か、それぞれ詳しく解説していこう。

 1つ目の方向性として挙げた広域運用をベースとした効率的な統一市場を形成するには、①地域間電力融通と②競争環境整備が必要である。

 前者についての効果は、これまでの地域限定の電力供給から、全国をまたぐ広域で電力を融通できる供給体制に移行することで、電力の供給安定性が向上する。同時に、電力需要とは無関係に賦存している再生可能エネルギーの導入も拡大できる。

 後者についての効果は、需要家が全国に広がった市場から最も効率的な事業者を選択することができるようになり、発電事業者が全国規模で切磋琢磨する競争環境と電力価格抑制メカニズムが生まれることが期待できる。

 電力システム改革の第二弾として電力小売りの全面自由化が想定されているが、電力小売の本格的な競争を実現するには電力会社の管轄地域をまたいだ競争を促すことが必須である。PPS(特定規模電気事業者)のシェアがわずか3%程度という過去の電力自由化の成果を見ても、地域独占という事業構造に風穴を開けることは活力ある市場を形成するための不可欠な条件と言える。

 2つ目の方向性として挙げた地域エネルギーの仕組みは、自治体レベルの小さな単位で、地元の自治体、企業、金融機関が支える体制であることが、地域に深く根ざすためには不可欠な要素となる。

 電力自由化で力を持つのは、やはり効率化された巨大電力会社であろう。ただ、そのスケールメリットを追求した効率化とは違うポジショニングを持つ地域のエネルギー会社ができることは、消費者に多様な選択肢を提供するエネルギーシステムを提供することを可能にする。

公益としての広域運用

 地域間の電力融通を行うには、広域運用が必要であることを既に述べた。だが、1951年以来の硬直的な地域独占体制のままでは、まず実現しない。

 日本の電力市場の改革が求められるなか、広域運用実現の手本の一つとして注目するべきなのが、EUがユーロ統合以来形成を進めている電力統合市場だ。EUでは、1996年のEU電力指令以来20年近くかけて、異なる制度・電力システムを持つ国々を広域送電網でつなぐ電力統合市場を構築してきた。

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動き出す電力システム改革

2013年7月の参院選で自民党が大勝し、衆参のねじれが解消され、自民党政権は基盤を盤石なものにした。これによってまず、一気に進むと見られるのは電気事業法の改正だ。震災以降、課題であった発送電分離や電力事業への新規参入が進むと見られる。8月初旬からは制度設計ワーキンググループでの協議が始まった。電力システム改革には、どのような課題があるのだろうか。また、電力業界や他の産業界、一般消費者にどのような変化をもたらすのだろうか。

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