戦後最大の電力改革

 広域系統運用機関の設置、発送電の分離、小売完全自由化などを打ち出した電力システム改革の案が2013年4月2日に閣議決定された。今後は、法案提出、改革の実行に向けた次のステップに移る。戦後最大の電力システム改革と言ってよい。日本経済に大きな影響が及ぶことになる。より多くの人にこの改革の意味を理解してほしい。

 私事になるが、私は昨年1年間、この電力システム改革に膨大な時間を割いた。経済産業省・資源エネルギー庁の電力システム改革専門委員会の座長として今回の案をまとめる立場にあったのだ。民主党政権で始められ、自民・公明の新政権で閣議決定されたが、1年近くの時間をかけて議論を重ねてきた。

 座長を引き受けた当初は、非常に難しい改革であるという印象を持っていた。交わされた議論も、これまで私が経験したさまざまな審議会より、はるかに熱いものであった。それがこうしたかたちで結論としてまとまったことを大変喜ばしく思う。

 電力はすべての国民が、そしてあらゆる産業が利用するエネルギーである。その料金がどう決まるのか、国民が電力をどう利用するのかは、日本経済全体のパフォーマンスに大きな影響を及ぼす。電力システムで大きな改革が行われれば、電力業界はもちろん、経済のすみずみまで多様な影響が及ぶことになる。

改革の理由:過去

 では、なぜいま電力システムの改革をしなくてはいけないのか。その理由を考えてみると、過去、現在、未来という3つの背景があると思う。そのうちの過去と現在の部分について今回取り上げ、次回に未来の部分を議論したい。

 まず、過去であるが、政府はこれまで何度も電力システムの制度変更を進めてきた。しかし、その変更は十分な成果をあげることができなかった。こうした過去の失敗が、今回、より踏み込んだ大規模な改革につながったのだ。