ダグラス・マグレガーは、2つの異なる人間観とそれに対応するマネジメントスタイルを表わすX理論とY理論の開発者である。そのキャリアは比較的短いものであったが、多くの現代のマネジメント論者に大きな影響を与えた。
『企業の人間的側面』(The Human Side of Enterprise)はマネジメント思想の流れを変える重要な分岐点となり、人を中心にした現代のマネジメント観の基礎を築いた。
人生と業績
ダグラス・マグレガー(1906―64年)はキャリアの大部分を学究活動に充て、ハーバード大学やマサチューセッツ工科大学(MIT)やアンティオーク大学で教鞭を執り、MIT初のスローンフェローズ教授になった。彼は早くに亡くなったため数冊の著書しか発表していないが、これらの本の影響力は大きい。1993年にマグレガーはアンリ・ファヨールとともに最も人気のあるマネジメントの著述家に選ばれた。
(『Management Gurus―What Makes Them and How to Become One』)
現在のマネジメント論の学習や実践に大きな影響を与えているロザベス・モス・カンターやウォレン・ベニスやトム・ピーターズといったアメリカの著名な著述家たちが、現代のマネジメント思想の原点はマグレガーであり、特にリーダーシップ論に関する彼の著作の意味は大きいと口を揃えて言っている。
思想のポイント
マグレガーはマネジャーの基本的な信念が企業運営のあり方に多大な影響を及ぼすと考え、この中核を成すのが人間行動についてのマネジャーの考え方だとした。この考え方は大きくX理論とY理論という2つに分類されるとマグレガーは主張している。彼の研究成果は1960年刊行の『企業の人間的側面』で詳しく論じられている。
X理論とY理論は人の働き方に対する2つの見解を表わしており、2つの対照的なマネジメントスタイルを表わすのにも用いられる。