以前、女性会社員から名刺をもらったとき、メールアドレスに下の名前がつけられているのを見て、少し驚いた記憶がある。「hayashi@」「ogawa@」など、「@」の前に名字がつくアドレスは多いが、「tomoko@」「sachiko@」というように、名前がつくメールアドレスは社用では少し珍しい。だが、しばらくして、女性は結婚して名字が変わる場合が多いため、あえて下の名前をアドレスにつけているのかもしれないと思い当たった。

 では、結婚後、職場で新姓を使うか、旧姓のままで通すか。オウチーノ(東京都港区)が行った調査によれば、旧姓のままで通す女性は年々増えつつあるようだ。

 調査は9月20日~24日に実施。調査方法はインターネット。調査対象は20~59歳の既婚男女1104人。

20代~50代で大きく違う
「職場では旧姓」の割合

 20~59歳の既婚女性に、職場で新姓と旧姓のどちらを使用しているかを質問したところ、旧姓を使っていたのは全体の14.7%。年代別に見ると、20代=24.4%、30代=19.0%、40代=10.3%、50代=5.9%で、年代が下がるにつれ、旧姓を使う人が多かった。

 旧姓を使い続ける理由は、次のようなもの。

「浸透している名前で仕事を続けることが、社内外にとって楽だと思ったから」(34歳/結婚4年目)
 「新姓は呼ばれなれていないから」(25歳/結婚9ヵ月目)
 「変更を言って回るのが面倒」(38歳/結婚7年3ヵ月目)
 「名刺を新しくするのが面倒」(29歳/結婚6ヵ月目)

 40代以上で新姓を使っている人からは、「新姓か旧姓かを選ぶような時代ではなかった」(48歳/結婚25年3カ月目)、「昔は当たり前だったから」(58歳/結婚32年5ヵ月目)という声も聞かれ、新姓を使う理由として「新姓を使うのが当然だと思ったから」と回答したのは20代=25.0%、30代=29.0%、40代=32.8%、50代=43.2%と、これも年代による意識の差が顕著となった。

 冒頭に挙げたメールアドレスの件だが、名字が変わればメールアドレスも変更しなければいけないこともあるだろう。変更しないにしても、ただでさえ電話口で伝えづらいメールアドレスが実際の名字と違っていては紛らわしい。また、上に挙がった名刺の例からも分かるように社外との交流が多ければ多いほど、名字の変更は厄介だ。

 いつか変更するのであれば早いうちの方が良いという考え方もあるだろうが、定年まで同じ会社に勤めることが昔より少なくなっている状況を考えると、「当面は旧姓でも…」と思う女性がいるのもわかるような気がする。また、便宜上の理由に加え、旧姓に愛着のある人のなかには、仕事上だけでも旧姓を使いたいという希望もあるかもしれない。