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設備過剰を引き起す「計数のワナ」(その1)――規模の経済

千賀秀信
【第6回】 2009年7月23日
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 景気拡大とともに設備投資を拡大してきた自動車、電機、機械などは、世界同時不況の影響で、需要の急な減少に見舞われ、生産能力が余る供給過剰に陥っています。

 経済産業省の鉱工業指数で見ると、工場稼働率(季節調整済指数:2005年の数値を100)は、2008年9月は101.7だったものが、10月97.7、11月88.5、12月78.1、2009年2月には60.5まで下がっています。このため、09年3月までに供給過剰の解消を急いだ製造業は、国内工場を相次いで閉鎖しました。4月時点でも67.2とやや戻し、5月では72.6と回復しているのは、工場閉鎖の結果も反映しているのでしょう。

 1990年代のバブル崩壊後でも、設備過剰が問題になりましたが、このときは設備過剰の解消に10年かかりました。設備過剰のほか、債務過剰、雇用過剰の3過剰が問題になったことが思い出されます。バブル期と異なる点は、債務過剰が問題になっていないことです。

 今回は、企業が陥りやすい設備過剰を引き起こす「計数のワナ」の一つを検証してみましょう。

規模拡大による
固定費の削減効果

 前回のテーマ「低価格戦略を実現するための、コスト削減のポイントは?」で詳しく触れませんでしたが、規模拡大によるコスト削減効果(規模の経済)は、良く知られた低価格実現のために必要な考え方です。これを簡単な事例で確認してみましょう。

 ある自動車部品の中小製造業では、大手自動車メーカー向けの部品を製造しています。月次の原価実績は(表1)の通りです。昨年の世界同時不況により、月間生産可能量40000個ですが、実績はその62.5%の月間25000個になっています。さらに1個80円で販売してきましたが、納入先から、さらに大幅な値引きを求められています。その代わり、今後は、中国などの新興国からの注文が増えているので、発注量は大幅に増やしたいという提案も受けています。まずは現状を分析してみましょう。

表1・表2

 現在、1個当たりの総原価(製造原価と販売管理費の合計のこと)は、86円ですから、1個80円の販売価格では、1個当たり6円の営業損失がでています。製造販売量は月25000個ですから、15万円(6円×25000個)の営業損失ということになります。

 この原価実績で考えると、何個を製造販売すれば利益がでるでしょうか。

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千賀秀信

せんが・ひでのぶ 公認会計士、税理士専門の情報処理サービス業・株式会社TKC(東証1部)で、財務会計、経営管理などのシステム開発、営業、広報、教育などを担当。18年間勤務後、1997年にマネジメント能力開発研究所を設立し、企業経営と計数を結びつけた独自のマネジメント能力開発プログラムを構築。「わかりやすさと具体性」という点で、多くの企業担当者や受講生からよい評価を受けている。研修、コンサルティング、執筆などで活躍中。大前研一のアタッカーズ・ビジネススクール講師。著書に『新版・経営分析の基本がハッキリわかる本』(ダイヤモンド社)、『経営センスが高まる! 計数感覚がハッキリわかる本』(ダイヤモンド社)、『「ベンチャー起業」実戦教本』(プレジデント社:共著)、『会社数字がわかる計数感覚ドリル』(朝日新書)などがある。
●マネジメント能力開発研究所のホームページ
http://homepage3.nifty.com/maneji/


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