地産地消には、その土地ならではの旬な食材を新鮮な状態で楽しめ、地域農業の活性化や食料自給率の向上につながるというメリットがある。しかし、生産・輸送時の環境負荷に注目してみると、地産地消はかえって「ムダ」を生む場合もあると著者は指摘する。聞こえのいい「地元産」の真実に迫る。※本稿は、バイロン・リース&スコット・ホフマン『この世からすべての「ムダ」が消えたなら:資源・食品・お金・時間まで浪費される世界を読み解く』(白揚社)の一部を抜粋・編集したものです。
育つまでに2年もかかる
アイスランドの北極バナナ
2008年のコーネル大学の研究からは、野菜をアメリカ中西部からニューヨークへトラック輸送するほうが、ニューヨークの温室で栽培するよりエネルギーが6分の1で済むことがわかった。なぜだろうか。温室は多量のエネルギーを食ううえに、中西部の広大な土地で栽培すれば「規模の経済」によるメリットが大きい。だから全体として見ると、国土の半分を横切って農産物を運ぶほうが必要エネルギーは少ないのである。
出発地から目的地まで地球を半周する場合であってもこの点は変わらない。ニュージーランドのある学者チームによる研究では、イギリスに住む人がイギリス産の食物を消費するのと、同じ人がニュージーランド産の輸入食物を消費するのとで環境負荷がどう違うかを調べた。
すると、「イギリスでラム肉を生産するのに使用されるエネルギーは、ニュージーランドのラム肉生産者が使うエネルギーの4倍にのぼる。ニュージーランド産ラム肉をイギリスに輸送するためのエネルギーを含めたとしても同様である」ことがわかった。イギリスで子羊を飼育すると、エネルギー代と肥料代が余分にかかることにおもな原因がある。
あるいは、アイスランドでバナナを生産することを考えてみてほしい。信じられないかもしれないが、それは実際に行われている――いや、行われていた。ご存じかとは思うが、アイスランドは世界のおもなバナナ産地から遠く離れている。掛け値なしに遠い。
ところが、アイスランドは地熱エネルギーに沸きたっていて、しかもこれはほかの場所のほかのエネルギー源に比べて安価である。生産地から遠いことと、安価なエネルギーが存在することを考えあわせれば、アイスランドの温室で手頃な価格のバナナを効率的に栽培できると思うかもしれない。