変革は企業リーダーにとって、最も困難な仕事とされることが多い。その手段にかかわらず重要な要件として、アンソニーは「変革の4P」を挙げる。


 企業のリーダーにとって、変革ほど困難な仕事はない。成功のカギの1つは、企業変革には以下の3つの行動が含まれると認識することだ。

●中核事業を変革し、その再起力を最大化させる(変革A)
●破壊的な成長のエンジンとなるものを創造する(変革B)
●上記2つのあいだで、ケイパビリティ(組織的能力)を共有する仕組みを構築する(ケイパビリティの交換)

 この3つの行動(詳細は、クラーク・ギルバートらによる論文に記されている〈邦訳は本誌2013年6月号「相反する2つの変革を同時に進める法」〉。ギルバートらがユタ州のメディア企業であるデザレットを変革した経験を基に書かれている)は、偶然に起こることはない。慎重かつ一貫したリーダーシップが必要となる。企業変革を進めようとするリーダーには、「変革の4つのP」を覚えておくよう勧めたい。

1.目的(Purpose)
 変革は困難な仕事だ。過酷な現実に対処しなければならない日々もある。中核部分の縮小が必要になるかもしれない(ギルバートは2010年8月に、新聞部門の人員を42%削減した)。あるいは、新たな成長事業において、進路を大きく変更する必要があるかもしれない。悲観的な人は、「レガシー事業」(昔の事業)は売却するか廃止してしまったほうが簡単だと言うだろう。しかし、レガシー事業は重要なだけでなく、そこには必要なケイパビリティがある。それを新規の成長事業と共有すれば、強みとなるはずだ。

 明快な目的――財務的なリターンを超えた、より広範なミッション――により、変革A・Bの両方を追求する理由を示すことができる。目的の一部はストーリーとするべきだ。変革後にはどのような姿の企業になっているのかを提示しよう。『デザレット・ニュース』では信仰・家族・教育を重んじるという方向性を示したことで、厳しい変革を進める勇気が生まれ、長期にわたり変革を持続させることができた。

2.人材(People)
 変革における人の重要性を説いた言葉は多数ある。難しいのは、適切な人材はリーダーが想定する人ではないかもしれない、ということだ。とくに、新たな事業においてはそうである。最も優れた部下は、変革Bに参加したがるだろう。リーダーも、そうさせたいと願う。だがそうしてはダメだ。優秀な部下は既存事業に適した能力やマインドセットを伸ばしてきたのであり、新たな事業に適しているのではない。

 代わりに、新事業に最も近い事業で能力を磨いてきた人々を配置しよう。ギルバートはデザレットのデジタル事業を立ち上げるため、ヤフーやオムニチュア、デマンド・メディアなど、インターネット専業の企業で働いていた人々を集めた。