うちの会社のスゴい商品をヒットさせる方法 石黒不二代
【第1回】 2013年10月30日
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石黒不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]

なぜ日本には「いい商品」を作っても
売れない企業が多いのか

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音楽をリビングから解放した
ソニーのウォークマン

 では、今までモノ中心の生産・販売をしてきた日本には、かつてこのような商品があったでしょうか。もちろんありました。それが、ソニーの「ウォークマン」です。

 ウォークマンもiPod同様に大ヒットしたのは、製品が小さくてかっこよかったからではありません。それまではリビングルームや自宅の中でだけ聴くものだった音楽を、音楽プレイヤーを持ち運べるサイズにしたことで道を歩きながら聴けるようにしたことが画期的だったからです。この体験の変化こそが、ヒットの最たる理由です。つまり、ウォークマンは、ユーザー体験の変化を売ったのであり、決してソニーはウォークマンという機器を売ったわけではないのです。

 ウォークマンは、音楽をリビングから解放しましたが、iPodはCDショップにCDを買いに行かなくても、いつでも好きな音楽が自宅で買えるようにしてくれました。ですからこれは、どちらも「モノ」ではなく「コト」を売っているといっていいでしょう。ですから繰り返しになりますが、コトや人の体験を変えてこそ、ひとつのスゴい製品が初めて爆発的なヒットになるのです。

忙しい女性でも“寝ながらエステ”
パナソニックが仕掛けた「体験の変化」

“寝ながらエステ”ができる商品として発売された「ナイトスチーマー」

 では、ここ最近で人々の体験を変えることによって、ヒットした製品を見てみましょう。

 例えば、2008年に発売されたパナソニックの「ナイトスチーマー ナノケア」です。この製品は、忙しい働く女性をターゲットに“寝ながらエステ”ができる製品として大ヒットしました。

 「毛穴まで蒸気が行き届くことで肌がすごくきれいになる」というように製品の品質向上を謳ったとしても、なかなかユーザーにはその魅力が伝わりづらいといえます。

 しかし、「寝ながらエステができる」というのは、どうでしょう。普段はエステにかける時間がないような働く女性の需要も取り込める画期的な「コト」です。これは“ながら美容”という体験の変化をつくり、新たな顧客体験を生みだしています。

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石黒不二代 [ネットイヤーグループ代表取締役社長兼CEO]

スタンフォード大学にてMBA取得後、シリコンバレーにてハイテク系コンサルティング会社を設立し、日米間の技術移転等に従事。2000年よりネットイヤーグループ代表取締役として、ウェブを中核に据えたマーケティングを支援し独自のブランドを確立。

うちの会社のスゴい商品をヒットさせる方法 石黒不二代

こんなにすごい技術、製品がうちの会社にはあるのに、なぜ売れないんだろう…。これは多くの日本企業が直面している問題といえます。この連載では、インターネットが当たり前の時代において、経営の目線から自社の技術を生かしつつ、ユーザーに受け入れられてヒットする商品の作り方を解説していきます。

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